第17話 ダイアナの服
朝陽に連れられて弓道場へ。階段を下りて、その階段の後ろに通り道があった。
薄暗いその道に入ると、しばらくして開けた場所へと出た。
「ここが弓道場だよ!」
そう言って朝陽は少しはねながら一足先に弓道場へと出た。
通ってきた道は弓道場に続いていて、弓道場の奥には的がある。
家の裏に、しかも新しく出来たとは思えないほど広かった。
ひのきが使われており、暖色の色と木漏れ日が良くマッチしている。
け的が置いてある弓道場の奥は屋外になっているため、そこから冷え込んだ風が
入ってくるが、木漏れ日を吸収した木が自然と床暖房になっており、あまり寒くない
「広いですねぇ…。」
「僕が弓矢を使ったことがないからアーチェリーの練習場ではなくて
弓道場なんだけどね、それでも使えるからアリア器用だよ!」
そう言いながら朝陽がアリアを見ると、アリアはしばらく朝陽を見た後、
手から言霊で“手帳”を取り出した。ダイアナと同じ出し方だ。
(…?手帳の色…。)
初日以来ダイアナの手帳は見ていないが、確か紫色だったはず。
(綴リビトによって色が…違うんですか?)
「はい。私は、マゼンタ。シャーロットは、緑。イザベル、ジェシーは、黒色。」
「“Key”のときに出た光と基本的には同じ色ですよー」
自身が問いかければ、アリアとシャーロットから返事が来た。
アリアは普通、弓道場ではそこから矢で的を射るために立つ場所で、
日向ぼっこをする朝陽のそばに移動した。シャーロットは少し距離を
置いてはいるものの、ジェシーと一緒に日向ぼっこをしている。
「貴様ら!なぜ日向ぼっこをしているのだ!一時間しか時間はないのだぞ?!」
「そ、そうですよ一秒たりとも無駄には出来ません!」
そう叫んだ二人の意見はごもっともなもので。
この中で常識人って、蓮とジョシュアだけ…?
「それもそうだね…じゃぁ始めちゃおっか!」
でもその前に、と朝陽が言うと、
「お兄様!ただいま帰りましたーー!」
「使用人からこちらにいると聞いたので。」
昼望と伽宮夜が帰ってきた。…ということは。
「ダイアナちゃん、コーディネイトしてきましたよ!」
「………。」
そう言いながら、弓道場へと続く道の前にいた昼望と伽宮夜の後ろから、
ダイアナが現れた。
(えっ)
「あらぁ…可愛いじゃない」
「似合ってますよ~」
日向ぼっこをしていた綴リビトたちは振り向き、ダイアナの姿を見て
皆で拍手をしている。
「ダイアナちゃんのワンピース(+上着)だけだったトップスは、昼望が
白くて薄い生地のジョーゼットに、」
「スカートは、ロング丈のアコーディオンプリーツに伽宮夜がしました。」
そう言ってダイアナを前に押し出す二人は満足げだ。
(!ダイアナ、髪が…。)
しかし、ダイアナの長い髪が消えていた。
「邪魔だから切った」
「せっかくだから切りますか?って聞いたら本人から要望があったので!」
「美容師さんに頼みました。」
やっぱりお金払った方が良いんじゃないか、コレ。
ダイアナの髪は朝陽の髪のようになっていて、肩につかるか
つからないぐらいだった。
元々の髪は膝まであったので、思いっきりバッサリ切ったことになる。
「キレイになりましたねダイアナー!」
「貴方達コーディネイトのセンスがありますわね」
「「え!本当ですか?!」」
シャーロットがダイアナに近づき頭を撫でる。二人は確か姉妹なんだっけ。
そんなダイアナの服装を決めた双子にジェシーが褒めると、
二人とも純粋に喜んでいた。笑った笑顔が朝陽そっくりだ。
その後、時間が押しているのにと蓮に怒られたので、
しぶしぶ(主に朝陽が)話を切り上げることに。
双子の二人は嬉しそうにはしゃぎ、笑いながら帰っていった。
「…さて!ダイアナちゃん帰ってきたことだし、武器の練習しよっか!」
「残る、残り、時間、30分」
「やっぱり時間がないじゃないか!」
というか移動時間除いて25分もダイアナの衣装を愛でてどうするんだ!という
蓮の意見はごもっとも。もう「ごもっとも」しか言えない。
「でも、どうやって武器の練習を?」
「確かに。朝陽とアリアはあそこに的があるから射る練習でしょうけど…。」
武器の練習というのは、扱い慣れるためというのもあるだろうけど、
実践という意味でもあるのだろう。暴言者はきっと容赦しない。
自身の敵である綴リビトはもちろん、寄り添われ、言霊を多く宿す寄り添いビトも。
「ああ、心配には及びませんよ。」
するとシャーロットがカーディガンを着なおしながらそう言った。
「私と蓮は爆弾なのね、構造と投げてどう命中させるかをさきにやります。」
実践はジェシーさんとジョシュさんのお力で部屋を作って
もらえることになりました。」
「任せなさい。」
「部屋を作った後は僕たちも練習しますよ!」
「ダイアナと結翔さんは…そうですね、同じ剣なので互いの武器の扱い方の
確認と、実戦、ということになるでしょうか」
とすると、ダイアナの短剣VSレイピアになるが。
(剣の長さとかいろいろ問題あるけど、大丈夫かな…)
「心配ない。武器は壊れない。これだけは、暴言者の力でも。」
(あ、それはよかった…。)
「それに、私はずっと。短剣を使って暴言者を倒してきた。大丈夫、やられない」
おそらく数百年も扱ってきたのだろう。絶対に強い。勝てるだろうか。
(お、おてやわらかに…。)
「ん。でも一つだけ問題がある」
(え?)
「身長の差。」
あ…。
「あらあら。でも、暴言者も身長の差がありますから。高低を考えて
攻撃出来るようになるのも良いと思いますよ♪」
それを見ていたシャーロットが笑いながらそう言った。確かに、言霊を食べるほど
頭は賢くなって体も大きくなるから…。
「じゃあ決まりだね!あと23分しかないけど!!」
そう言って笑った朝陽の頭に、
「だから時間考えろって言っただろ!」
「あでっ!」
と蓮のチョップが当たったのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます