第14話 片割れ発見

「…っく、ふ、あはは…。」


蓮と朝陽は言葉で、自身は心で。それぞれの思いを

イザベルとジョシュアの両方に伝えると。


「あっはははははははは!」

「イザベル?!」


イザベルが急に笑い出した。さきほどまでカッコよく(?)思いを伝えた

蓮も、自身も、打って変わってぽかんとなった。

朝陽は…疑問符を頭に浮かべている。


「もう!もういいわ!降参よ!ふふふふふ!」


笑いすぎて出てきた涙をぬぐいながらそう言った。


「いいわ、協力してもらう!」

「え、ええ?!イザベル!?!?」


突然の賛成に驚いたジョシュアが慌てた様子でイザベルを見る。


「いいじゃない、ジェシー!協力してもらうのよ!」

「で、でも…」

「“利用出来るものはなんでも使う”の!」

「!!」


ズイッ、とジョシュアにつめよったイザベルに、ジョシュアが

更に驚いた顔をする。


「…まぁ、イザベルが、そう言うなら…」

「よし!バンバンこき使っちゃうわよ!」


ジョシュアも賛成したため、きっと暴言者と自身も戦うことになるだろう。

バンバンこき使われるのは、さすがにチョットナー…。


「さて!ココにいる全員が賛成しましたね!ということで、

また“あの人”と暴言者探しから始まりますよ!」


パン、と顔の前で手を叩いて笑ったシャーロット。

そうだ、最初からになるんだ…。


「地道な作業にならずに、今回もサクサクいけないかしら。」


ハァ、とイザベルが紅茶をすすりながら器用にため息をつく。


「…、厳しいでしょうね。」


寂しそうに微笑むジョシュアに、自身と蓮の頭の上に疑問符が一本出来た。

朝陽に関しては先程と合わせて二本だ。


イザベルが笑ったのはきっと、

「貴方達の思いが真剣すぎて笑っちゃった!」だろう。…そう思いたい。


「前回は、寄り添いビトが居なかった。綴リビトだけ。10人だけ。でも、

暴言者を破ルモノが倒せる唯一の“武器”。それを扱えることが出来る

寄り添いビトが居れば、暴言者に対する武器の勢力は20になる。」

「でも、難しいんですよねぇ…。」


シャーロットの苦笑。そっか、前回は人が文字化してしまったから寄り添え

なかったんだ…。もしかしたら協力してくれる寄り添いビトもいたかもなのに。

そして今回も人が文字化しているのであれば。


「人全てが文字化する前に寄り添いビトを見つけないとですね…。」

「あぁいやだわ、よりによってなぜちょうど寄り添い終わったときに…。」


寄り添いビトがいなかったらいなかったで、綴リビトは大変なんだなあ…。



「“武器”と言えば、みなさんちゃんと持ってます?」


シャーロットがふいに自分と朝陽を見た。もちろん自身の寄り添いビトである蓮も。


「ちゃんと持ってるよー!」

「フン、当然だ。」


シャーロットと目が合った蓮が鼻で笑うと、首元からネックレスを出した。

そして朝陽も首元からネックレスを…


(いや、ネックレスじゃない…?)


しかしネックレスと言ったって、二つともなんだか長細いような。


「あ、結翔くんは他の寄り添いビト“Key”を見るのは初めてでしたよね。」


ニコ、とシャーロットが笑い、蓮に手を差し出す。すると蓮は首に

かけていた“Key”をシャーロットに手渡した。蓮も首にかけていたんだ…。


朝陽もアリアに手渡す。朝陽の“Key”は、クローバー型の“Key”で、

濃い黄土色だったためどこか古風な雰囲気があった。蓮の“Key”はというと、


自身の“Key”は木製の十字架のような“Key”であったが、蓮の“Key”も木製の

十字架のような“Key”だった。そして蓮の“Key”の十字架が半分に割られたように

なっていた。


(あ…!)


慌てて首にかけていた“Key”を服の下から取り出す。そしてそれがあらわになると、

蓮は驚いたように目を見開いた。


「貴様、それっ…!」


こっちに来い、と急いで手招きする蓮の元へ席を立って近づく。そして

互いの“Key”を合わせると…。


はっきりと、十字架の形になった。


そして鍵穴に入れるとんがりは、自身は左、蓮は右と割れてないほうに

ついていたため、キレイにくっつくこととなった。


「シャーロット。コレは…」


蓮が思わずシャーロットを見ると、


「あー、バレました?」


と相変わらずニコニコと笑っていた。


「…ダイアナ。」


しかしふいに笑顔を崩し、ダイアナに真剣なまなざしを向ける。

シャーロットの声に反応したダイアナは、


再びアリアを撫で始めていた朝陽と、再びアリアに撫でられていたアリアを見ていた

視線を外し、シャーロットを見た。


「…言っていい」

「ホントに?」

「手伝ってもらうんだから。明かしたほうが良い。」


ダイアナはそう言うと再び視線を朝陽とアリアに戻した。

シャーロットは「さ、さうですか…」と困ったような顔をしていたが。


「シャーロット。」


蓮に呼ばれ、軽く深呼吸をすると。


「その十字架は、私が割りました。」


そう言った。


(やっぱり、割ったんだ…。)

「ええ。形状から見てわかるでしょう、割れたのが。割りばしより割るのが

難しかったんですよ~。何せ十字架自体が小さかったので。」


まぁ、十字架とはいえ確かに小さい。漫画でよく十字架を手で持ってかざしている

シーンがあるが、そのときのような小ささだ。


「なぜ割ったんだ?」

「それは…。」


私とダイアナが、姉妹だからです。



「ふふふ、似てないでしょう?」


力なく笑っていたシャーロットだが、「言っちゃったー」と元の笑顔を取り戻した。


(…は?え?)

「姉妹?!」

「しまい?!」


いつの間にか聞いていた朝陽と、蓮と共に驚く。


「双子ならわかるが…、“あの人”に作られたのなら結局全員

「兄弟」のようなものではないの…ぶっ?!」


いぶかしげにたずねる蓮の口元に人差し指を押し付けると、シャーロットは


「はーい、これ以上は乙女のプライベート!個人情報!シークレットでーす!」


と言って話の話題を切り上げた。ダイアナと出会って増えた謎が今回のお茶会で

解消し始めたのにまた増えたな…。


「…もう発言してもよろしくて?」


シャーロットの告白を見守っていたイザベルが、先程朝陽が漁っていたお菓子袋から

取り出したマカロンを食べながらそう言った。


(あ、すみません…)

「いいんですよ、謝らなくて。」


ジョシュアさんは心配性だけど優しそうな人だなぁ、今日見る限り。

いや、優しいから心配性なのか。


「えっと…、寄り添いビトの持つ武器については知っているわよね?」


イザベルがそう聞くと、蓮が即座に答えた。


「確か“寄り添われたことによって、寄り添いビトに溜まる

言霊を狙う暴言者から身を守る物”…だろう?」

「うんうん、“寄り添うことになった綴リビトが持つ武器と同じ種類の武器”だって」


それについてはダイアナから自身も聞いた。別にダイアナのことを疑っていたわけ

ではないのだが、他の寄り添いビトが自身と同じ説明を受けていることを確認出来て

何度も安心できてしまう。


「じゃぁ、皆様さん武器に変えられますか?」


ジョシュアにそう言われ、蓮と朝陽は即座に変える準備を始めた。

…って、え、すぐに出来るんだ…。


二人とも互いの綴リビトに持たせていたが、その持った手の上にさらに自身の手を

重ねて目を瞑った。シャーロットとアリアも同じように目を瞑る。


するとシャーロットと蓮の、アリアと朝陽のそれぞれの片手で包み込んだKeyが、

4日前ダイアナに見せられた時と同じく、眩まばゆい光を発した。


手のひらの隙間から、その光が漏れている。唯一違うのは、その光の色だ。

蓮の方は緑、朝陽の方はマゼンタ色の光。


その光と共に、包み込まれた“Key”が形を変えていく。

やがて…


「出来た!」

「待つ間、集中しなきゃならないのがキツイな…。」


光が止み、朝陽と蓮が形が変わった“Key”を持つ。“Key”は“武器”へと姿を変える。

寄り添いビトを守る武器に。二人の武器はー…


弓矢と、爆弾だった。

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