第11話 居た場所

「…とまぁ、案外さくさく進みましたね!」

「アリアの話、長かった」

「しょうがない、私、口調、これ」

「まぁまぁ…さて、じゃー話し合いしますか」


(いやちょっと待って?!)

「すとーーっぷ!!」

「いやちょっと待てシャーロット!」


 え?何次に進もうとしてるんですかこの人。続きは?!話の続きは?!

 詳しく話してくれるんじゃなじゃなかったの?!


「えー、まぁ、普通にその後は特定した場所を聞いてー、行ってー、倒しました♪」

「それは流石にさくさく行き過ぎじゃないか?!非常事態だったんだろう?!?!」

「非常事態と言えば非常事態でしたけどねぇ…」


 いやもう今現在も非常事態なんですよどこからどうみても非常事態なんですよ

 普通の人間(寄り添いビト)から見ても非常事態なんですよ


「まぁ激戦の末私は左腕が取れちゃいました♪」

「はぁ?!?!」

「私、首、半分、切る、切られる、切られました」

「ふぇ?!?!」

「うん。右耳半分持ってかれた。」

(えぇ?!?!)


「「「治ったけど」」」


「…コイツら殴ってもいいか?」

「おわぁ、殴り合いはダメだよ蓮くん!」

(あああ…ちょ、イザベルさん、ジョシュアさん!これどうにかしなと!)

「こうなってしまったら止められないわ、諦めなさい…」

「たまには寄り添いビトに殴られたらいいと思います、

 特にシャーロットさん…(理由:今回のからかいMVPだから)」


 話し合い会場がカオスになってきた…。このままでは、茶会ちゃかいじゃなくて

血会ちかい」になってしまう。でも、さすが不老不死だな…。


 治るのに要する期間とかはダイアナから聞いたけど。首は大体そうだし、

 腕も人間であれば即死はありうる。


(まぁ、激戦だったってことはわかるけれど…)

「あ!ほら蓮、結翔さん賛同してくれてますよ!」

「なんだと貴様!」

(えっ)

「“激戦をしてきたんだから大目に見てあげて”ですって」

(いやそんなこと僕言ってな)

「貴様、結翔!コレはどう見たって激戦だろうと説明すべきだろう!

 なんのために語り部立候補したんだシャーロット!」


 シャーロットを殴ろうとする蓮とそれを止めようとする朝陽、

「やっちまえー、」と遊ぶイザベル、それを止めようとするジョシュア、

 で、見ているだけの…自分と、ダイアナとアリア。


 どのみち止めなければ話し合いが続かない。自分としては武器や綴リビトについて

 色々聞きたいことがあるのだ。見ているだけじゃなくて自分からも止めなければ。



(ス、ストップ!結局どこにいたんですか?!暴言者と、その、“あの人”!)


 シャーロットと蓮の間に割り込むように入り、シャーロットに語り掛ける。

 自身の心の声は綴リビトにしか聞こえないので、蓮や朝陽に語り掛けても反応は

 もちろん、気付くことすらないだろう。


「えーっと、どこだったかしら…」

「洞窟ですよ、イザベルさん」

「あ、そうだったわね。イヤだわ、重要なことなのに…。

年は取りたくないわね」

「そうですねぇ」


いや、不老不死でしょう皆さん…。


(洞窟って…地盤とか以外は全て文字化したんじゃないんですか?)

「その洞窟だけ残ってましたね…」

「言霊だけを詰め込んだから、少しばかりバカだったのよね、その暴言者。

フィオナが察知した方角に一つだけ洞窟が残ってたのよ。怪しいったらなかったわ」


言霊は、暴言者の好物で、食べれば強くなる。そのため反論しても効くことはなく、

だから武器を使って強制的に倒すのだとダイアナは言っていた。…初日に。


(言霊って、暴言者の賢さに関係があるのですか?)

「大アリですよー。得るほど強くなり、賢くなる。人格が出来ていきますからね」

「心に宿って、言葉を食べ始めたばかりの暴言者はその人が嫌う言葉しか最初は

喋らないのは知っているわね?宿主の心を傷つければ言葉に力が宿るから。」

「憎しみから出た言葉は、強力な言霊を宿します。本人の言霊の極限開放に

なるからですね。漫画とか小説でもよくありますが。」

「だから知性もまだあまりない暴言者は、負の感情を宿主に溜め込ませることで

爆発した憎しみの言葉とかを…叫びださせる。それで力を得る、実に幼稚なやり方」


幼稚なんだ。結構怖い…というか、悪賢いやり方だと思うんだけど…。


「会話で出てくる言葉は自然と出ているものだから、言霊は少ない。だから力を

得れる量も少ないのだけれど…。言霊を一気に得れれば、飛躍的な力を持つ」

「あ、蓮が今おチビちゃんなんですけど、それが一日で高身長のモデル体型になる…

暴言者が求める言霊にはそのような力がありますねー」


誰がチビだ!!と本日何度目かの憤慨に慌てて朝陽が止める。アリアに

「食べ過ぎ」とお菓子の袋を奪われて暇をしていたので、蓮を抑えるのは速かった。


「“あの人”は特定出来た、と言えば出来たんですけど…」

「すごい近くにいたわ」

「え!近くにいたのぉ?!」

「あれは、恨む、恨みます」


気配を頑張って探したのはわかるけれど…逆に近くにいたのなら喜ぶべきでは、と

思うが、アリアは何か恨むようなことがあったのだろうか。




「ジェシーが持ってきたスモックにくるまれていましたわ」


(え…スモックに?!)“あの人”の身長がどのくらいなのかは、見たことがないので当然わからないが、

イザベル、ジョシュは大体16歳ぐらいの見た目で、身長は恐らく157cmぐらい。


その人たちが着るスモックはMサイズのハズだ。そこにくるまれていたとしても、

ジョシュアがアリアにスモックを渡したとき、気付くだろう。


「“あの人”は…なんだろ、関西弁で、喋りますね…」

( 関西?! )

「関西?!」

「かんさい?」

「一人だけわかってない」


言葉の化身だから難解な言葉を喋るのかなって考えがあったけれど…まさかの関西?


「昔一回日本言ってから関西の方言が気に入ったそうですよ」

「言葉の化身ってだけあって、すぐに方言覚えてましたわ」

「フィオナは元々明るい人。テンション高めい。“あの人”はそんなかんじだった。

だけど久々に会ったら陽気なおばさんみたいになっててビックリした。覚えてる」


やっぱり言葉の化身というだけあって、太古から生きているのだろう。作った

張本人なのだから、綴リビトより先に生まれたのは当然だろう。


「シャーロットが、綴リビトは“あの人”の位置を暴言者に探られたりしないために、

敢えて名前で呼ばず“あの人”と呼んでいる、と言っていた。しかし何か他には

伝えられないのか?」


蓮がダイアナに向けてそう言った。


「“あの人”の姿は、言うことができる。。」

(決まってない?)

「どういこうことだ?」

「言葉は名詞や動詞…と、いろんなものになれたりする。“あの人”は言葉の化身。

言葉そのものだから、言葉と同じでいろんな姿になれる。」


性質が一緒、ということだろうか。名詞や動詞…言葉が、文字が、読書が

大好きだった中1のころに学んだけど、いくら好きでも、そういった


名詞や動詞のほかにある、副詞や形容詞の違いが、よくわからなかったのを

覚えている。今は文字酔いしてさらに苦手になった国語だけれど、前々から

文法だけはダメだったな。


「まぁ、現在…というか、最後に会ったのは20年くらい前ですかね。女の人の

姿なのは前々からだったんですけど…姿形、変わってませんでしたね、昔から。」

「変わったのはその口調だけってことかぁー」


朝陽が椅子をギコギコ傾けたりして遊びながらそう言った。…後ろに壁がないのに

よく倒れずにキケンな遊び方が…器用だな…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る