哀 君の好きなハンバーグ

君とは趣味も違うし価値観も違う

食べ物も行きたい場所も 何もかも

つらい日もときめく日も 沢山超えて

ようやく2人で愛する命が生まれた


僕の料理の腕はどんどんあがっていった

可愛いひとり娘もぐんぐん育っていった

写真も本も思い出もガラクタも増えていく

涙も喧嘩も笑い声もワガママも増えていく


家族ってそういうもんなのかな

家族ってこういうもんなのかな


僕は少しずつお父さんになれているかな

最近少し自信がなくなってきたんだよ

それもこれも 君がいないからだよ


笑いあったあの日には言えなかったこと

どうしてだろう 当たり前すぎたから

当たり前に 君に言えなかったんだ

愛情も不満も寂しさももっともっと

言葉にして伝えてあげればよかった


今更になって 君に伝えられる言葉が

南無阿弥陀仏だなんて つまらないのに


空からとつぜん降ったきらきら天気雨が

僕の代わりに泣いてくれたから助かった


写真立ての前に ちいさな皿をことん

できたてのハンバーグをひと欠片

君の好きなトマトソース仕立てだよ

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