第3話

今日、僕は仕事がある。昨日とは違い、慌ただしい朝がはじまる。

まずは耳から頭の中の骨にまで容赦なく響かせてくるようなジリジリといった機械音から始まる。

僕はすぐに目覚まし時計を片手で掴み、スイッチをオフにする。僕は一つ寝返りをうち、また平穏が訪れたような気持ちになる。しかし、それは一瞬のことであってすぐに現実に戻される。

頭の中で今日は仕事がある、8時には家を出なければならない、会社に着いたらまず何をしようかなどといろいろなことが順序なく思い浮かぶ。そうなればもう起きるしかない。ならなくても起きなければならないが。

僕は重い身体を起こして、支度をそそくさとはじめる。そしてそのまま急いで家を出た。




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まぶしい太陽が僕の眼前を明るく照らす。

僕はそれに対し、つい目を強ばらせる。

明るいより暗い方が好きだ。しかしながら人間の活動は常に暗い時ではなく明るい時である。そういったことに僕は嫌になりながらも僕は仕事場まで歩いていた。

僕が働く仕事場は家から徒歩で20分ほどのところで日々の運動がてら歩いて向かう。実際のところ自転車を買うのがもったいなく感じているからなのであるが。そして仕事場につくと事務的なデスクワークが始める。内容としては都度違うことをしているので決まってこれというのは特にない。決まっていることは自分の席に座り、パソコンをカタカタといわせているということだけだ。

僕はパソコンを触りながら横目に動くものがいることに気がついた。右腕辺りに目を向けると黒くて小さなほこりにでも間違えそうなアリがいた。僕は咄嗟に手で払おうとしたが服に必死にしがみついているアリをみるとなにか悪いような気持ちになってきた。僕は周りの人間に気づかれないよう、そっと立ち窓に向かった。そして窓をあけそっと腕にのったアリを外にやった。

僕はその時、昨日スーパーで出会った女の店員を思い出した。彼女も僕の今と同じような気持ちでアリを外にやったのであろうか。そう思うと彼女と僕が同じ人間であることを強く示しているようでなぜか気持ちよく感じた。それは多くの時間を共に過ごしている、今周りにいる上司、同期、後輩よりもずっと濃い"なにか"である。昨日の店員のことの何を知っているのかと言われればもはや何も知らないに等しいし、なんなら昨日初めて出会ったのだが僕は彼女に対してなにか特別な近いものを彼女のいない仕事場で1人感じた。

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