妊娠報告3

「食欲無くなった。」と言いながら温め終わったお弁当を出して「アチッ」と言いながら蓋を開けていた。白ご飯とビーフシチューの匂いに吐き気がして、トイレに駆け込んだ。

つわりだろうか?ずっと吐き気が続いている。食欲無くなったと言いながら食べ。食べ終わった容器の匂いで気持ち悪くなるので、机の上を片付けた。(産みたい)彼に言おうと思って彼の顔を見た。絶望感を感じている。何も言ってくれないが、そうわかる。体調大丈夫?りなはどうしたいの?と気遣ってくれると期待してた。大人の対応をしてくれると、だって彼は30歳の社会人だから。と思っていた私が間違いだった。「健太郎さんの子供が、りなのお腹の中にいます。」堪えきれずに溢れ出た涙と、震えた声でもう一度彼に伝えた。彼はただ「うん」と言って抱き締めてきた。「今めっちゃ怖いの。不安なんよ。でも分かってるから。降ろして欲しいでしょ?」と一度出た涙をもう止められずにいる私。「分かるよ。せやな」と言って頭撫でてきた。産んで良いよって言ってくれるのかな。なんで優しくするのだろう。「情け無い。中高生で妊娠ってなったらわかるけど、私26だよ良い大人だよ。無責任にも程がある」

「でもさ。」と彼が言った。でもってなんだ?「ちょっと初めてのことで混乱してるけど。」何回も経験あるならこの男本当に最低だ。てか、そんな男を見抜けなかった私が1番馬鹿すぎる。中ならが息が漏れた「なんで言って良いか分からん。なんで言って良いか分からんけど。」「なんで言って良いか分からんってどうゆうこと?りなは1人で育てれんよ。1人で子育てとか無理。健太郎さんはどうしたい?」「降ろした時のりなには後遺症はないな?」「あるよ。あるに決まってるじゃん」「でも2人で育ててくれるの?」「今は無理」「今は無理。」呆れて半笑いで「じゃあいつならいいの?」「いや。マジでちょっと」「病院行く前にも。妊娠検査薬で2回検査したけど。事実は変わらないよ。赤ちゃんは勝手に消えてくれないよ」一緒に育てよう!と覚悟を決めてくれるんじゃないか、彼は一応術後の私の体を気にしてくれたから。未だに彼が大人として、責任を取ってくれると思い込んでいた馬鹿な私。「いや。本当に?マジか。本当にゴムしてなかった」と現実を受け入れてない彼。「いやほんとなんて言って良いか分からん。」「あの日いった記憶ないもん。だからゴム無かったんじゃない」こと人は本当に言ってるの?なんなんだろうこの人、と思いながら止まらない涙を止めようとしながら、黙って聞いていた。「反省しかない。」何かを納得し彼は話し始めた「だってさ。今の状態で俺らの関係で、産む事は絶対できないし。正直気持ち離れてる。ただ嫌いじゃないし一緒に居て楽しいし」未婚の母だな。私しかこの子を守れない。産む事はできるんだよ健太郎さん。と心の中で思っていた。「楽しく無くなっちゃったね。気持ちが離れてたのは分かってた。LINEも態度にも出てたし。」「もっと早く言ってくれたら良かったのに。俺逃げやんから。てか、りなは深く考えやんほうがいい。考えても良いことない。無かったことにしたほうが良い」と今、現実から逃げようとしてる男に言われた。誰が信用するのだろう。無かったことにする?人1人殺して?しかも自分の子を?何こいつ?

「分かった」たくみに相談しよう。「そりゃね。家も勤め先の会社も分からんなら、分かるけどさ」「家は引っ越しできるし。会社も嘘かもしれないやん。そもそも会社に乗り込むみたいな、非常識なこと出来やんよ。まぁ、さすがに家の前で1時間待ってた時は。住人の視線もあって、私非常識なのかなとは思ったけど。」「りなの体に後遺症残るのが1番嫌だから、早く病院行って日にち決めよ。」一切私の意思を確認することなく彼は、満腹感からくる睡魔のせいか1人ベッドルームに向かい携帯をいじり始めた。次の日の朝彼は寝坊したと慌てて家を出て行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る