妊娠報告 2

手足が赤くなり完全に冷えきった23時、《今会社から出る。どこおる?》と家の前で待ってるとLINEにしてあるのに、読んでないんだな。彼にとって私は、心底どうでも良い人なんだな。それとも相手のことを想いやれない、気遣いの一切できない人なのか。どっちだろう、いやどっちもだったよね。

彼はコンビニの買い物袋を持って、LINEが来た40分後に帰宅した。「おかえり、お疲れ様」「ごめん待った?待ったよね。ごめんね」22時って言ったのは健太郎さんやのに。待ったに決まってるやん。『感情的になったらあかんで』とたくみに言われてた事もあり、もれそうになった言葉を我慢した。エレベーターに乗ると「話したい事って何?」と優しい口調で聞いてきた。「部屋に着いたら話す。」涙がでた。泣いたらダメ。感情的になったらあかん。と自分に言い聞かし、精一杯の強がった。彼の部屋は17階、2人きりのエレベーターは長かった。彼の部屋に着き、部屋着に着替えてる彼を見ながら、ソファーに座りどう切り出すか。なんて言えば良いのかわからなくて、病院でもらった【おめでとうございます!予定日は2022年5月25日です】と言うハガキと、日付と病院名の入ったエコー写真を、机の上に裏返しで並べて市販の妊娠検査薬2本は鞄の中でいつでも出しやすいようにした。「んで。なんやった?」「ご飯食べてないんやろ?先食べたら?」コンビニの袋を指差して、聞くと彼が買ってきたお弁当をレンジレンジにいれ3分押して戻ってきた。「何なの?」っと優しく声をかける彼に、面倒臭いと思っているだろうと察し無言でハガキを渡した。次にエコー写真。妊娠検査薬2本を手渡し、彼が何か言ってくれるのを待ってみた。どれくらいの沈黙だったのかはわからない。少なくともレンジレンジは回っていたので、3分未満。沈黙に耐えきれなくなり「前回家来た時、9月30日やん。その日健太郎さん疲れてて、寝たけどゴムしてなくて朝起きて確認した時も、してた形跡なくて。電車の中で、緊急ピル飲んだんよ。97%で大丈夫やから、まさかとは思ってたんやけど、私生理周期ずれた事ないし、ちゃんとアプリでつけてるし定期ピルも服用してるから不安で、検査したら陽性やった」と震え泣きながら一気に話した。彼は「うん。」と言いながら聞いていた。彼の顔を見るのが怖くなって、見れずずっと自分の手を見てた。〜♪〜レンジレンジが、お弁当を温め終わった音がなる。彼は何も話さない。手渡したハガキと写真をずっと見てた。「え?いつ。え?やったっけ?」「え?覚えてない。ゴムしたって」と言うので「ゴムしてなかったよ」とだけ言った「覚えてない」と彼は言った。彼も混乱してる筈だから、「レンジ呼んでるよ。ご飯先食べたら」と言った。あ、逃げられると思い取り乱しそうなのを、必死に落ち着かせ絞り出した一言だった。

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