妊娠報告

《別れ話なら、会わなくてよくない》と冷たく放たれたLINEに《別れたいとかじゃない。どうしても直接会って話たい。絶対明日詳しく話すから》と縋りついた。《LINEじゃダメなの》明らかにめんどくさいという感情を、包み隠さず送る素直な健太郎さんに(私は彼を頼ることはできない)と完全にパニックだった。「感情的になったらあかんで。難しいと思うけど冷静に!」とたくみに電話で念を押された。健太郎さんの前で絶対に泣かないと決めた。感情的に泣いてはいけない。《直接話さないと私が困るねん。明日ちゃんと話す》《わかった》《21時に家に行くね》仕事大好きな彼は、残業も喜んでする。働き方改革とは、程遠い働き方をしていた。本当に会ってくれるかな。優しい人は行動に移すが、彼の優しさは口だけだから。妊娠初期の不安定な精神状態に、社会的に孤立した気分で誰にも迷惑かけたくないし、頼れないと思い込んでいた。私には家族も、友人も支えてくれる人はたくさん周りにいたのに。見えてなかった。産みたいけど1人で育てられない。無責任に産んではいけない。でも、私の子だ。産みたい。でもおろせって言われたら。養育費払いたくないって言われたら。とりあえず。話し合わなきゃ、きっと大丈夫。彼は成人男性だし、会社勤務。学生ではないし、学生だったとしても責任感がある人は、結婚したり養育費を払っている。彼は30歳の歳上だし大丈夫。と根拠のない期待をしていた。結婚してほしいとは思ってなくて、献身的に支えて寄り添ってくれると期待していた。《また待たすの悪いから22時して》《分かった。》と言うしかなかった。仕事なら仕方ないし、時間作ってくれるだけで少しだけ安心した。

 当日21時 《今から行くね》彼の家までは1時間弱。余裕を持って家を出た。

22時丁度に彼のマンション前につき、インターフォンを鳴らしたが応答がなかった。居留守かな。どうしよう。逃げた。さらに不安になり、LINEを見返す。《22時にして》と時間は間違いない。まだ仕事かな。《待たすの悪いから》と言っていたから、今日はいつもと違うのかなっと思っていたが、22:15《何時に着きますか?もう少し仕事していい》とLINEが来たので《もう着いてるよ。待ってるね》とLINEしてもう少しと言っていたので、30分後電話したが結局彼から連絡が帰ってきたのは23時だった。1時間弱。マンションが立ち並ぶ住宅街、時間をつぶせる喫茶店もなく近くのコンビニで、温かいほうじ茶を買いマンションの前で待つしかなく。不安だし人目が気になった。私大丈夫かな。不審者で通報されないかな。つわりで頭痛もするし、微熱が続いている。10月中旬の雨の日だった、寒かったな。

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