3%の奇跡
生理が来なくて不安で軽くパニックだった。友達の沙耶に付き添ってもらいマツモトキヨシで妊娠検査薬を2つ。別の会社の誤診があるかもしれないから。と購入した。一人で見る勇気はなく沙耶の家に行き、一緒に確認した。陽性反応だった。
3%。たった3%の奇跡あなたはその奇跡をわたしにくれた。望まない妊娠だったとしても、あなたは私を選んでくれた。ママとして愛してくれた。一緒に成長できると信じて選んでくれた。なのに私はあなたを裏切ってしまった。
ごめんね。あなたが97%の壁を乗り越えて、私のとことに来てくれて本当は嬉しかった。だって私の夢はお母さんになる事だから。
友人のあおいが、不妊治療で5年苦しんでいるのをずっと見ていた。妊娠初期の流産も見ていた。あおいは旦那さんが献身的に支えていた。その大変さが、あおいの強さが身に染みて今わかる。あの日、「りな妊娠したでしょ。隠さなくてもいいよ。私に遠慮なんかしない。おめでとう」そう言ってくれたのに。私がベビタンとお別れしたことを知ったあおいは、泣きながら私に言った。「なんで。なんでりななの。5年。5年も頑張ってるのに。なんで私じゃないの。人殺し!殺すなら。私に頂戴その命。無責任だよ。望んでなかったってりななら一人でも育てられるやん。なんでなんで簡単におろしたん」何も言えなかった。その通りだった。三重の実家に帰れば、実家のサポートもあって育てられた。私は両親に愛されて育った。だからこそあなたを愛せる自信もあった。だけどきっと私じゃなくて、あおいの所だったら幸せだっただろう。
妊娠が確信した瞬間。健太郎さんに話さないと。どう話そうと考えた。逃げるかもしれないから、逃げた時の対策も考えないと。弁護士の友人に相談した。
たくみに相談したとき。「りな体調大丈夫?」と優しく声を掛けられ。健太郎さんも優しいから大丈夫だ。と思った。たくみは本当に健太郎さんの子であることを信じえもらえない可能性もあるため、陽性が確実な証拠を用意すること。会話は全部録音して聞かせてと親身になって相談にのってくれた。私には大切にしたい友達がたくさんいた。今も大切にしたいのに、人殺しである私に友人たちと一緒に笑う資格はないと遠ざけている。子宮の痛みも、止まらない出血もきっと、あなたが生きたかったと今も言ってるんだよね。愛してくれたのに。選んでくれたのに。あなたは97%の壁を乗り越えて奇跡をくれたのに、守れなくてごめんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます