第2部「帰って来た雷神合体ゴオライガー」
第2部「プロローグ」
プロローグ
蛸。
該当する単語を探すならば、その単語が一番近いだろう。あんまんのような楕円形の頭部から伸びる、8本の長い脚。人間の顔でいう目の位置に円らな目を持ち、ほぼ穴だけの鼻。口に該当する部分は筒状に突き出ていた。実際の蛸のような吸盤は無く、肌はつるりとしていて、黒い。
筒状の口が、言葉を発した。
「全艦、目標に向かい問題なく航行中」
報告を受けた、周りより一段高い場所にある椅子に座った、偉そうな魚が、「うむ」と返事する。正確には魚のような頭部を持った、体型は人型の何か。
見れば、周りにはタコだのイカだの魚だイソギンチャクだ、そんな海で見るものに近い形の生物たちが、様々な計器の前で担当の仕事をこなしている。ただし、計器とは言ったが、実際の艦船やSFなどで描かれている計器とは大分ビジュアルが離れている。ここでは、大概のコンピューターが水性コンピューターであり、水のような外見をしている。そしてハードディスクやビジュアルボードに該当する機器は、珊瑚の塊であったり、地球で見かけるところの、熱帯魚に近いデザインをしていた。つまるところ、タコだの魚だの型の異星人が、きらびやかな水槽の前で仕事をしていると思って頂ければ良いだろう。実際、まるで水族館の中でタコや魚の着ぐるみを着た係員が作業しているようにしか見えない。
さらに、これらを艦橋とする超大型宇宙船も、特異な形をしていた。直径5キロにも及ぶ球体。その球体から伸びる、細長い棒状の物体。地球にあるもので例えるならば、爪楊枝の刺さったタコ焼きに良く似ていた。その巨大な宇宙船が、10隻も編隊を組んで宇宙を航行する様は、圧巻では有りつつ、微妙に食欲も誘った。
「全艦! 微速前進!」
偉そうな魚が立上がり、さらに一段高い、玉座と呼べるような椅子に座る人物の方を見上げる。そこには、上半身が女性、下半身が魚の、いわゆる人魚の姿をした人物が座っていた。きらびやかな装飾の水着のブラのような物と短めのマントを身に纏い、さらにはあちこちに貴重なものと思われる宝石を身に着けた女性は、長めのボブカットの黒髪の美女であった。
王族のような気品ある印象を受けるその女性に、偉そうな魚が「陛下」と声を掛ける。陛下と呼ばれた人魚の女性は、豪華な杖を、モニターに映る蒼き惑星へと向けた。
「これより、侵略を開始する! 目標! 太陽系第三惑星、『地球』!」
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