6.危険なアポイントメント。
翌日。ギックーとリゴッシは、カケルたちの社会科見学にもちゃっかりついて来た。
「社会科見学と思って、バカにするなよ?これを機に、こういう道に進もうって考えだって湧くかもしれんのだからな!」
やけにヘルメットの似合うゴリ松が言う。確かに、15メートルを超えるトンネル掘削機の迫力は、人生の分岐点に立つ高校生には、良い刺激になっているようだった。また、これよりずっと進んだ文明を持つギックーとリゴッシにとっても、自分たちにはない技術として、参考になったらしい。
「地球の文明も大したものだな。我々には無い発想だ」
見学を終えてトンネルから出る道すがら、ギックーは感慨深気に言う。
「そうだね、勉強になったね」
にこにこと笑っていたリゴッシだったが、ふと気が付いたように懐を触ると、表情が曇り出す。
「ない」
「ん?何がないんだ?」
「通信機。どこかで落とした」
「落とした!?あれは一応、まだこの星には無い技術が使われているものだぞ!」
「早く見つけなくちゃ!」
「全く。一緒に探してやるから早く行くぞ!」
○
「いや、至福の時間だったね」
はしゃぎ疲れることを知らないカケルの頬が、まだ興奮でほんのり赤い。
「素晴らしい」興奮気味で樫太郎が言う。「あの機械がゴリゴリガリガリ地面を掘削するところを想像するだけで堪らん」
「格好良かったー」鈴はうっとりしている。「あたし、トンネル掘削業者になりたくなるくらいだわ」
三人の反応に満足気なゴリ松。ふと気が付く。
「神宮路、お前の叔父さんとやらはどこに行った?」
言われてアリアーシラは、ギックーとリゴッシの姿がないことに気が付く。
「どうしたんでしょう?先ほどまではいましたのに」
そのとき、カケルの、アリアーシラの、樫太郎のブレスレットが警報を鳴らす。
アポイントメントだ。
少し遅れて、鈴とゴリ松のスマホがけたたましく警報を鳴らす。
何だ?いやな感じがする!
そう思ってカケルが見上げた空から、落ちてくるアポイントメント。それは先ほどまでカケルたちがいたトンネルの上部に、突き刺さる。
吹き付ける突風から、カケルはアリアーシラを庇う。ゴリ松は勢いよく、「俺の生徒に怪我はさせんぞ!」と四人を庇うべく飛び出したが、飛んできたヘルメットに頭部を強打して気絶した。
「大丈夫?怪我はない?」
両肩に手を置くカケルに、アリアーシラは顔を赤らめる。
「はい。大丈夫です」
カケル君たら、庇ってくれた上に何だか男らしくて素敵です。はっ、もしかして今って良い感じなのでは!
アリアーシラは目を閉じて、ちょっとつま先立ちする。
「樫太郎、お鈴、先生を頼む!俺たちはラインマシンへ急ごう!」
もちろんカケルはアリアーシラの場違いなキスアピールに気が付く訳も無い。彼女の手を取ると、走り出した。
○
状況は決して良いものでは無かった。トンネル上部から突き刺さったアポイントメントは、トンネル内部の落盤を引き起こし、また、自身もトンネルの通路を塞いでいた。さらには生き埋めになった人たちのいる区画でアポイントメントの表面素材と薬品が反応し、異常な高温を発していた。
「今のところ死者は確認されていません。ちょうどアポイントメントの刺さった区画に人員がいなかった模様です」
ラインフォートレスの艦橋で、花音が神宮路に伝える。
「幸いと言ったところか。問題は、生き埋めになった人たちが、いつまでこの高温に耐えられるかだ」
「敵はタイラード10機を確認」来花が報告する。「ここ以外に展開されたアポイントメント7個に関しても、機影はタイラードのみ。なお、ゴオライガーは、戦況を確認している余裕が無いため、合体状態で待機」
来花は報告しながら、アポイントメントを中心としたモニターを確認する。そしてそこに、新たに現れた機影を確認した。
「あれは——」
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