2.発足、国連地球防衛軍。
「では神宮路君、これは全て異星人の侵略が発端だと言うのかね?」
「そうです。全ては異星人の侵略に対する対抗手段です」
答える神宮路の瞳はよどみない。
今、昨日の今日という早さで、国際会議が開催されていた。内容はガイダン及びゴオラインなる巨大ロボットの危険性及び保有による軍事バランスについてである。主たる内容に異星人の侵略は含まれていない。それは、事実を信じられないのか。いや、信じたくないのか。
急に開催された会議にしては、出席率は非常に高かった。出席者の中には、日本の間宮総理とアメリカのディアドルフ大統領の姿もある。その場に来れない首脳に関しても、オンラインで回線が繋がっている。
その中にいる神宮路は異例の存在であったが、その財力、その毅然とした態度はこの場に相応しいものだった。
「問題はあれだけの戦闘兵器を、いずれかの国が保有することなのだ」
「お言葉ですが。あのゴオラインはあくまで私個人の所有物に過ぎません。どこかの国に属させるつもりもない。それよりも問題なのは、異星人の侵略に対する早急な対応です」
「異星人の侵略などと——」いやらしい感じで、モニター越しの首脳が言う。「どうせ昨日のあの動画もCGか何かじゃないのかね?」
「それはない」
ディアドルフ大統領がきっぱりと言った。
「私はあの場に居た。そして異星人の侵略兵器と巨大ロボットの戦いを目の当たりにしました。それに間違いはない」
「日本政府との関与についてはどうなんだ?」
「日本政府は——」間宮総理が口を開く。「関与を否定しません。いち早く神宮路君より地球の危機について語られていた我々は、彼の提唱する異星人に対抗する計画に協力して来た」
「日本政府が関わっているなら、やはりあの巨大ロボットを日本が保有するつもりなんじゃないのか?」
「それもない」
もう一度、ディアドルフ大統領がきっぱりと言った。
「一国が保有するつもりならば、全世界に公開する必要はない。そんなことよりもだ。早く今回の議題を、異星人の侵略とそれに対抗しうる『
EF兵器。その言葉に場がざわつく。
「神宮路君、概要の説明を」
間宮総理に促され、神宮路は説明を始める。
「先ず一つ、地球は地球外の生命体によって侵略行為を受けている。これは紛れもない事実です。そして一つ、地球の現行兵器では、その侵略者に対抗する手段としては非常に心許無いということです」
「昨日——」間宮総理が続ける。「我が国の自衛隊と侵略者の兵器が交戦しました。自衛隊の戦闘能力は皆さんも知るところかと思います。結果は自衛隊としては敗北。原因はもちろん、練度などではありません」
総理に続いて、神宮路が言った。
「圧倒的に戦力が足りないのです。物理的な兵器の戦力が。だが、ゴオラインは勝った。その勝因はゴオラインを建造することを可能にした、新金属『エナジウム合金』にあるのです」
議会内に、モニターに、数式や記号などが一斉に映し出される。
「エナジウム合金。自らエネルギーを生み出し、さらにはチタンなどの合金を大きく上回る剛性と柔軟性を持ち合わせた金属。この金属の存在によってゴオラインは造られました。そしてゴオラインを基に、量産性を高めた人型戦闘兵器『エナジウムフレーム』、通称EFの建造データを全世界に公開します」
神宮路の語りに反応して、議会内に人型ロボット兵器の内部画像が表示される。
「各国がこのデータをもとに独自のEFを開発し、侵略者への対抗手段とするのです」
「待ってくれ」日焼けした顔の首脳が口を開く。「我が国のような小規模軍事国家では、そんな巨大兵器を建造する力はありません」
「ご心配なく。これより発足する世界規模の機関により——。いえ、ここからはディアドルフ大統領にお願いしましょう」
神宮路に言われ、ディアドルフ大統領は小さく咳払いすると立ち上がる。
「今現在、地球は未曾有の危機に瀕している。最早、各国が軍事・経済で争っている時代は終わったのだ。今、我々は、地球に対する侵略者という一つの敵に対し、手を取り合って一丸となり、対抗して行かねばならないのだ。大が小を助け、小が大を補佐する。その為の軍事組織の発足を、私はここに宣言する。『国連地球防衛軍』それがその組織の名だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます