第276話 恋愛バトル・ロワイアル ③

【楓side】



 うわぁ~、バレっちゃったわ !

 会場から深雪が私を探しているのが分かる。

 伊達だてに菖蒲学園の馬謖と言われているだけあるわね !

 でも、所詮しょせん 自称、菖蒲学園の『郭嘉かくか』を上回ることなんて無いのよね。

 既に変装済みの私を遠くから見つけることは不可能 !

 他の大江戸ファミリーは、仁くん と 勇気ちゃん以外は別の場所から観戦しているから一緒に居ない私を見つけることは、


 無駄むだ 無駄 無駄 無駄 無駄 無駄 無駄ぁー !


 何も私は、面白半分で仁くんに化粧をして、集団お見合いに参加して貰った訳では無いのよ !

 最初、地元テレビ局が 集団お見合いの企画を村長に持ちかけた時に、村長の家に居た私達にも参加の要請が有ったのよね。

 無論、パートナーの決まっている私達は一度は断ったのだけど………


 決して、提示された謝礼金に目がくらんで協力を決めた訳じゃ無いのよ !

 村おこし と云うか、ローカル放送とは云え これで観光客が増えれば良いと云う『地元愛』から協力したのよ…………もちろん、謝礼金は有り難く頂きましたよ !

 だって、学生のお小遣いは少ないのよ !

 かせげる時に稼がないと、デートだって楽しめないんだからね !


 と、云う訳で深雪たちに恨みは無いけれども、私達大江戸ファミリーの『愛のうるおい』の犠牲に成って貰うわね。

 まあ、直接 邪魔する訳では無いから許してくれるわよね。

 楓ちゃんは、『愛』に生きるのよ !




【勇気side】



 うわぁぁぁ~、 女装したジンに沢山の男の子達だけで無く、他の男の子達と話しをしていた女の子達までもが、ジンを取り囲み質問攻めにしている。


 そろそろ僕の出番かな ?


 女装したジンと一緒に僕も この『集団お見合い』に参加している。

 ………男装しているけどね。


 予定では、少しジンとお話しをしてから 告白タイムでジンに告白する予定だったのだけど、ジンが困っているから予定を早めて助けに行かなきゃ !


「ちょっと、ゴメンね !」

 囲んでいる男女の間に割り込んで行った。


「あら、可愛いわね。 お姉さんとお茶しない ?」


「 オバサンは図々しいわね ! 私達と『お話』しましょう」


「ショッた子キター ゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚ この際、男の子でも可愛いければ良いやぁー !」


 失礼だなぁ~、 男装しているとは云え 僕は女の子だよ !

 何処からみても判りそうなもんでしょう !


 ジンの元にたどり着いた僕は、


「迎えに来たよ、ジン ! 苦しい時も辛い時も楽しい時も一生一緒に生きて行こう ! 」


 自分でも顔が赤く成っているのが判る………


「うん、よろしくね ユウキ !」


 女装したジンが笑った瞬間、周りが一瞬 静かに成って…………やがて、


 パチ パチ パチ 👏 パチ パチ パチ パチ


 皆が拍手してくれた。

 てっきり、ブーイングが起こるかと思っていたのだけど………



「オオーッと、ココでいきなりカップル誕生だぁー !

 告白タイム前にカップルが誕生するのは、前代未聞だがルールには違反していないようでーす !

 今回の集団お見合いのカップル第1号に御祝いの拍手を送ってくださーい !」


 川ちゃんの呼び掛けに会場だけで無く、観客席からも拍手が起きた。

 エヘヘ、なんか恥ずかしいけど嬉しいなぁ~


 僕とジンは手を繋ぎながら会場を後にしたんだ。

 最後に川ちゃんからのインタビューがあるまで僕達は自由時間だから、久しぶりにジンを一人占めに出来るね ♪

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