第275話 恋愛バトル・ロワイアル ②

【深雪side】



 どうにかこうにか『集団お見合い』のイベントに参加することが出来たわ。

 周りを見ると、やっぱり女の子達の方が多いわね。


 良い男 良い男 良い男が居ないか男性陣を観察するけど、あまり良いのは居ないわねぇ~

 良い男は、とっくに誰かが手をつけているわよね !

 でも残りモノには副があると云うし諦めたら、そこでゲームセットよ !


 クイ クイ


 一緒に参加している博子が私の袖を引っ張りながら、…………デジャブ ?


「 ねえ ねえ、深雪 ! 彼方で群がっている男の子達に囲まれている女の子だけど、何処かで見た事があるような気がするんだけど思い出せ無いのよね ?

 アレだけの美少女なら忘れ無いと思うんだけど………」


 まったく、この娘は人を覚えるのが苦手なんだから、食べた栄養が『脳』に回らないで『胸』に回っているんじゃないかしら !

 決して、私の『胸』が慎ましやかだから、ヤッカンでいる訳じゃ無いわよ!



「 オオーッと、沢山の男の子に囲まれて居るS級美少女発見 !

 最近の肉食女子と比べて、可憐な美少女だぁー !

 ………決して、ウチの奥様『青山優羽奈ゆうな』や相方の『導火どうか』ちゃんが肉食女子だと言っている訳ではありません !」


 北海トライアングルの川ちゃんが、実況だか言い訳だか分からない事を言っているわね。

 トレンディ俳優の青山優羽奈が川ちゃんと結婚した時は少なからず『ショック』を受けたのだけど………あんな美女が、顔面偏差値の低い川ちゃんを選ぶなんて信じられなかったんだよね。


 博子や川ちゃんが言う方向に目を向けると、確かに何処かで見た事のある美少女が男の子達に囲まれて狼狽うろたえていた。


 う~ん、思い出そうとしているんだけど、思い出しては駄目な気がするのは何故 ?


「 え~、資料に寄りますと…………ねえ、スタッフさん、この資料は本当なの ? 」


 川ちゃんの元にスタッフさんが近づいて事実確認をした後、


「失礼しました。 資料に寄りますと、沢山の男の子に囲まれて居る可憐な美少女は参加ナンバー 13番 大江戸 仁くん、男の子………男の娘でしたぁー !

 女装男子、参加規定には禁止をされていませんでしたが、これは物凄いダークホースだぁー ! 」


 思い出したぁー !

 思い出したく無かったぁー !

 去年の文化祭でメイド喫茶店をやった時に楓が大江戸くんを化粧して女装させたのを思い出したのだ。


 あの女装した大江戸仁くんを見たクラス女子のほとんどが、


『負けたぁ~~ !』


 と、ショックを受けたのよね。

 そういう私も記憶に封印した一人だった訳だけど………


 川ちゃんの実況を聞いた女子達の何人かの目の色が変わった気がした。


 神宮坂良純の周りに居た女子達が、一斉に大江戸くんの方に向かったのだ。

 後に残された神宮坂良純は『ポカ~ン』としている。

 アイツ良純に対しては『ざまぁ』と想わない訳では無いけれど………笑え無いわね !


 だいたい、何故 大江戸くんが参加して居るのよ !

 おとなしい大江戸くんが、自ら参加するとは思え無いし、こんな事を考えるのは『 利根川 楓 』奴しか居ないわ !

 私は観客席に居るであろう楓を探していた。



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