第268話 夏休み ②

【明日香side】



 あの後、嫌味を言われることを覚悟して令子とお絹ちゃんに報告したのだけど、二人はあっさり許してくれた。


「 忠夫さんの本当の魅力に気づいて好きに成っていたようですし仕方ないですよ」


「悪いのは忠夫くんだから、明日香が気にすることは無いわよ !

 まったくあのアホが相手構わずにナンパするからイケナイのよねぇ~

 本当に世の中物好きがいるんだから考えなさいよね ! 」


 ………私も人のことを言えないけど令子、あんた自信を言っていることに気がついているのかしら ?



「 あの~、そろそろ石の上の正座がキツイので許して欲しいのですが………

 お願い ! 無視しないでよ、お絹ちゃん、令子さん、明日香 ! 」


 忠夫は、罰として石畳の上で正座をしている………主にお絹ちゃんの怒りによってだけど、あらためて私もお絹ちゃんだけは怒らせないようにしようと思った………だけど此方こちらがこれだけさわいでいるのに平然とお茶を飲んでいる妙神みょうじん龍姫たつひめには呆れるやら感心するわで複雑な気分だわ。



「 そろそろお仕置きもその辺にして、皆で野球部の試合を見に行きませんか ?

 三軍とは云え『最強学園野球部』のナマの試合なんて、なかなか見る事は出来ないと思いますよ」


 正直、野球の試合なんて興味が無いのだけれど………

 この重苦しい雰囲気を変える為なら仕方ないわよね !


「ずいぶんと落ち着いているようですけど、先輩とは云え私達の中では四番目なんですから特別扱いはしないですよ、妙神先輩 ! 」


 令子が妙神龍姫を挑発しているけど………


「もちろん、わたくしが後から皆様の中に割って入ったのだから文句なんてありませんよ !」


 しれっと言っているけど、四番目で満足するタイプには思え無いわ !

 何故なら私がそうだから !

 だけれど、令子は何とか出し抜けても………お絹ちゃんは………恐いわ !


「只、選ぶのは忠夫さんなのだから、私が選ばれても文句は言わないようにしてくださいね(ニコッ)」



 ………このアマぁ~、言いたい事を言ってくれるわね !

 お絹ちゃんも令子も笑顔だけど、口元が引きつっているわ。

 まったく、その自信は何処から出てくるのかしらおまゆう(お前が言うな)




【忠夫side】



 四人がにらみ合いをしている中、俺は話題を変えることにした。


「 さあ、早く野球を見に行こうぜ !

 もしかしたら、ウチの弱小野球部が名門の野球部を倒しちゃうかも知れないぞ ! よく漫画なんかで弱小だと相手を舐めて手を抜く名門が居るからな !」



 しかし………現実は、そんなに甘く無かった………

 皆で応援というより見学だった訳なんだけと、相手の最強学園野球部は手を抜くことも無く舐めてくることは無かったのだ !

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