第263話夏休み ①

【慈母観音 南side】



 どうして、こうなったのだろう ?

 本当は私達、仲の良い友達同士で水族館に行くはずハズだったのに、いつの間にか学園行事に成っていた。

 その為に夏休みに成ったにも関わらず会議をする為に由香と一緒に学園に登校している。

 私が悩んでいると勘違いした由香が、


「 しょうが無いわよ、南 ! こんな楽しそうなイベントだもの、皆が参加したがるのも仕方がないわ。 今では生徒会と風紀委員会が主導で取り仕切っているんだから、私達は気楽にいきましょうよ ! 」


「確かにそうなんだけど、私は アルテやシアと深雪と博子を誘っただけなのにいつの間にか大人数に成って生徒会が仕切ることに成るなんて思わなかったモノだから、今一納得が行かないのよね 」


「それは、きちんと口止めしていなかった南が悪いよ !

『友達の友達は皆友達、皆で拡げよう友達の輪』のノリで拡がったんでしょうよ !

 運動会を始めとした学校行事が減らされているから、皆 退屈しているのよ !」


 猛暑、酷暑が続いた結果、運動会を冬にするか中止するかに迫られた文部科学技術省は、冬の時期でも風邪やインフルエンザの心配をして学校行事から運動会が消えてしまったのよね。

 それに伴い『ブラック部活問題』も議題に上り部活動の制限時間が決まってしまった。

 一番喜んだのは先生達だと云う噂があるけど、単なる噂よねぇ~。


 昨年の生徒会長 筑波つくば瑠璃るり先輩が卒業したので、当時 書記だった 西船橋にしふなばし真由美まゆみ先輩が今の生徒会長に成っている。

 前の生徒会長がカリスマ性が凄かったので苦労していたみたいだけど、今回の行事で実績を作りたいのだろう。

 風紀委員長の浅草寺せんそうじ輝美てるみも張り切っているようね。

 ウチの学園は潮来由利子先生のお陰か、一部を除いて問題行動を起こす生徒は居ないもんねぇ~。


「 あ~あっ、暑いから早く生徒会室に行こうよ、南 !

 彼処なら最新のエアコンと生徒会用の無料ドリンクの自販機があるからね !」


「 由香ったら、もうしょうがないなぁ~ !

 無料ドリンクの自販機と云っても 麦茶と緑茶くらいしか無いハズよ」


「それでも、次のアルバイトの給料やお小遣いまで日があるからお金が少ないのよ !

 贅沢ぜいたくは言わないから、何か冷たい飲み物が欲しいのよ !

 あっ、だからって 南に『ジュースをおごってくれ !』と要求している訳では無いから勘違いしないでよね ! 」


「もう~、変な処で意地っ張りなんだからぁー !」


 暑いのを我慢しながら、私達は学園の生徒会室に向かうのだった。




【 西船橋真由美side】



 私と輝美は早めに学園に来て生徒会で準備をしていた。


「今時、紙の書類を こんなに用意するとは………

 コピー機でコピーするのに時間がかかり過ぎだよ ! 」


 輝美が文句を言っているけど、先生方や理事の方々の中には未だにパソコンやタブレット端末を嫌がる人が多いのよね。


「まあまあ、行事が少ないのだから我慢しようよ、輝美 !」


 他の生徒会や風紀委員会メンバーが来るまで私達は会議の準備をしていた。

 もともと一般生徒のイベントを学園行事にしてしまったのだから仕方がないのよね !

 これくらいしないと前の生徒会長である瑠璃るり先輩を越える事は出来ないからね。

 あ~あっ、こんな事なら功太郎こうたろうにも手伝わせるんだったわ !


「真由美、今 恋人の真道寺しんどうじ功太郎の事を考えていただろう !

 今回の水族館・遠足 はデートには、ピッタリだからな !」


「 もう~、そんなんじゃ無いわよ !

 それより輝美の方こそ恋人を作ったらどうなの ?

 ぼやぼやしていると アッ と云う間に『お局様』に成るわよ !」


「ウッ 痛い処をズケズケと………めぼしい男子は既に売約済みだし、私好みの男子生徒が居ないのだから仕方がないだろう !

 リア充は、皆 爆発しろ ! チクショウ ! 」


 輝美の機嫌を取るのが大変だったけど、会議が始まる頃には元に戻ったので良かったわ。

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