第233話 選択授業 ─美術─

【勇気side 】


僕たちは、選択授業に『 美術 』を選んだんだ。

『 音楽 』は曲をくだけなら ともかく、楽器の演奏や合唱は苦手だから パス した。

『 書道 』も 今一退屈しそうだったからなんだけどね。


そして今、僕たちは ペアを組んでお互いの『似顔絵 』を描いているハズなんだけど……… 大江戸ファミリー女性達が一緒に『 ジン 』を描いている。



「 先生が『 ペア 』と言ったのに、皆で『 ジン 』を描いて怒られないかなぁ~ 」

僕が疑問を口にすると、


「ああ、その件なら大丈夫だよ ! ちゃんと沖ノ鳥島おきのとりしま 太郎 先生から許可を取っているから、

『 《芸術は爆発だ ! 》だけど 恋愛の『爆弾💣️』は爆発させたら駄目ですよ 』

なんて、謎の言葉を言っていたよ ? 」


恋愛の爆弾💣️って何かな ?

楓を見ると教えてくれた。


「 昔、流行った『 恋愛シュミレーションゲーム 』に在ったシステムだよ。 仲の良く成った『 女の子 』を放置して置くと、爆弾💣️⚡️が爆発して、女の子達の『 好感度 』が下がるみたいだよ。 今、復刻版が出ているみたいだけど、仁くん やってみる ? 」


いや、遠慮しておくよ。 前に住んでいた近所で

引きこもってゲームばかりしている同級生が居たからね 」


「 あー ! 知っている、鈴鹿すずかさん家の『 クズマ 』だろう ! 」


「 真理姉、クズマ じゃ無くて『 和真かずま』だよ !」


「 元気でいるかなぁ~

小学生の頃は普通に一緒に遊んだんだけどなぁ~

真理姉は、和真が どうして引きこもってしまった本当の理由を知っていそうだね ? 」


「ああ、知っているとも ! あのクズマは小学生低学年の時に、スカートめくり や ボディータッチなど、セクハラをやりたい放題して女の子達に総スカン & お仕置きされたんだよ 」



今、気が付いたけど 真理姉……普通に話しているよね !

語尾に『 ニャ 』を付けていたのは演技だったんだね、やっぱり !


「 何度も止めるように言ったんだけどなぁ~

大丈夫かなぁ~ ? 」


「 大丈夫だろ ! クズマの幼馴染みの三人が頑張っているようだしな。 クズマなんかより良い男の子は いくらでも居るのに物好きだよなぁ 」


真理姉も人のこと言えないと思うんだけど………

せっかく海外留学したのに、ジンの事が心配で帰ってくるからね。

ジンと真理姉が話している間にジンのスケッチブックを見た………うん、安心したよ。 僕と同じ位に絵が下手だね !

描き直したのか、僕達全員の顔が其処にはあった。


「 『 絵 』下手だろう、ごめんね、上手く描けなくて……」


覗いていた僕に気が付いたジンが謝ってきた。


「 そんなこと無いよ ! 味が有って僕は好きだよ、ジンの絵 」


そんな僕達のやり取りに皆がジンの絵を覗いていた。


「 まあ、こんなモノだろう。 美術部員なら、ともかく 素人なんだから ! アリスに比べれば上手いと思うぞ 」


「 うん、うん、アリスの絵に比べれば 充分 合格だよ 」


「 酷いで~す ! ヒトミもカエデも私と五十歩百歩で~すね 」


「 う~ん、こうして見ると髪が長い娘が多いなぁ

楓ちゃん以外は皆が長髪ロングだな 」

真理姉の言葉に嫌な事を思い出した。


「 真理姉、それは私達三人瞳、楓、勇気が小学生低学年の頃に原因が有るんだ 」


「 そうそう、アレはトラウマ・レベルの出来事だったよね !」


瞳と楓が昔を思い出しながら語り出した。

昔、小学生低学年の頃に親の都合で僕達三人と瞳の姉である『るい姉ちゃん』と妹の『 あいちゃん 』が村長の家に預けられたんだけど…………

夏休みだった事もあり、村長が僕達の髪を切ってくれたんだけど………見事に五人全員が『 ワカメちゃんカット 』にされたんだよ !

そう、後頭部は刈上げられていて 僕達は夏休み中 引きこもりになった。

それから皆で必死に髪を伸ばしたんだよね。


瞳と楓が先を争うように皆に昔話しをしている間に授業終了の鐘が成った。

当然、おしゃべりに夢中に成っていた僕達の絵は完成しておらず 、後から先生にしかられてしまった。

『 絵 』は持ち帰り宿題に成ったけど一緒に住んでいて良かったよね。

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