第188話 春休み ④

【明日香side 】


春休みにも関わらずアイツ忠夫が学園に行くと言い出した。


「 今日は終業式だから、ほたるが学校の荷物を沢山持って来るハズだから迎えに行って荷物を持ってやらんとな ! 」


相変わらずのシスコンには頭が痛くなるが羨ましくもあるわ。

私も 『こんな兄がいたら良かったのに』と、思った事は内緒だ………恥ずかしくて言える訳がない。

春休みに成ったにも関わらず、私の足はコイツ忠夫の家に向かってしまう。

令子や絹の家では無くコイツ忠夫の家にだ。

認めたくは無い、認めたくは無いが どうやら私は コイツ忠夫を好きに成りかけているらしい。

我ながら『チョロい 』と思いつつも忠夫達と過ごす事は楽しかった。


忠夫と一緒に蛍を迎えに行こうとしている令子と絹の後ろ姿を見て思わず


「 私も一緒に行くわ ! 荷物持ちは多いに越した事は無いでしょう ! アンタ忠夫の為じゃ無いんだからね ! 蛍の為なんだから勘違いしないでよね ! 」



「 おっ、ありがとうな ! 助かるよ、明日香 」


ニカッ と笑うアイツ忠夫に『ドキドキ』してしまう。


そんな私を見て、令子や絹が複雑そうな顔をしていた。




♛♚♜♝♞♟



学園初等部の校舎の前で待って居ると沢山の荷物を抱えた蛍がやって来た。


「 蛍ちゃん、教科書全部を学園の引き出しに置きっぱなしにしてたんでしょう。

少しずつ持って帰っていれば、そんな大荷物に成らなかったんですよ 」


絹が『 プンプン 』と怒ったフリをしながら蛍に注意していると


「 まあ、可愛くてもコイツ忠夫の妹だしね

物臭 ものぐさな処なんて、そっくりだわ 」


令子が呆れたように言っていた。

それに対して蛍が


「 テヘッ、 ごめんなさい お姉ちゃん達 ! 」

と、舌を出して謝っていたが………確信犯だわ !



「 重たかっただろう、 後は兄ちゃんが持ってやるからな 」

そう言いながら蛍の荷物を持ち始めた。

本当に妹には甘いわね…………令子や絹も蛍の荷物を持ち始めたので私も仕方なく荷物を持つことにした。


「 本当にありがとう、お兄ちゃん お姉ちゃん達 」(にぱぁ )


可愛らしく笑う蛍にアイツ忠夫も令子や絹も優しく笑っていた。


蛍………恐ろしい娘 ! 将来は凄い悪女に成るのではないかと本気で心配してしまった。




♕♔♖♗♘♙


【 勇気side 】


今日も寒かったのでコタツに入っていると『タビ』がやって来た。

キョロキョロとジンを探しているらしい。

何時もジンの後ばかり追いかけて、ジンのひざの上が自分の定位置だと思っている節があるんだよね。

呼べば来てくれるんだけど、明らかに差別しているように思えるのは気のせいでは無いと思う。


その証拠に……… ジンと楓が皆のお茶を持って台所から出て来たら


「 ウニャァァ~ 」

と鳴きながらジンのジーンズに飛び付いてよじ登って行き背中に張り付いていた。


そんなタビを皆が笑って見ていたけど僕には笑えなかった。

僕は、どっちに嫉妬しているのだろう ?

タビに嫉妬しているのだとしたらジンは どう思うのかな ?

僕自身、こんなにヤキモチ焼きだなんて思わなかったよ。


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