第43話 勇気の青春 ④

【 勇気side】


 どっちだ、主審を見た。


「 白、どうあり 一本 !」


 クッ、先に一本取られたか……もう、後が無いな。


「開始線に戻って………構え……始め !」


 自分でもあせっているのがわかる。

 すきを見せれば、桐子は一瞬で間合いに入り一本取っていくだろう。

 前に闘った時より強くなったつもりだったけど、桐子も さらに強くなっている。

 たぶん、踏み込みの速さなら僕より速いかもしれないな。



【仁side 】


 僕の目からは、二人の実力は互角のように見える。

 速さ、正確さは同じくらいだけど 力は、水戸さんが上かな。

 それは、体格差からくるものだと思う。

 ユウキの方が身長が、頭ひとつ小さいからだ。

 そしてこれは、大切な事だけど 手の長さ 足の長さが、そのまま間合いの長さに直結する。

 まぁ、これは 空手での僕の考え方だけど 剣道だって、そんなに変わらないと思う。


 両者共に動きっぱなしのせいか息が荒い。

 う~ん、これはスタミナも向こうが上かな。


 ユウキ、長引かせると不味いぞ !

 声をあげて、アドバイス出来ないのがもどかしい。


 バギィ バギィ バギィ バギィ バギィ バギィ バギィ バギィ バギィ バギィ バギィ


 どちらも一歩も引かない。

 不味い ! このままだと………



「時間です 」


「 両者、止め !

 開始線にもどって 」


 二人が、開始線に戻る。


「 白、 どう 一本 ! 白の勝ち

 両者、礼 」


「「 ありがとうございました 」」


 ユウキが、戻ってきて選手が控えている所に座り面をはずした。

 歯を食いしばって、涙を流すのを我慢しているのがわかる。



 しばらくすると練習試合が終わり、

 ユウキが、こちらに歩いて来た。


「 負けちゃった 」


「 うん…………」


「 僕、ジンに良いところを見せようと思ったんだけど……」


「 うん………」


「だからなのかなぁ………負けちゃった」


「うん………」


「 ちょっとだけ ちょっとだけ

 ジンの胸で泣いていいかなぁ 」


「 もちろんいいよ

 僕の胸は、ユウキのモノだからね 」


 ユウキは、声をださずに僕の胸で泣いた。

 僕は、ユウキが泣き止むまで頭を撫で続けていた。

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