一人用台本 1~2

1 一度だけ

「すこし、聞いてくださいますか?

実は私、死神なんですよ。

あなたの魂を奪いにきたんです。

これでも、何万の魂を奪ってきた、エリート死神なんです。

だから、こんなこと、初めてなんです。

『生かしたい』。

なんて、初めて思ったんです。

けれども、私は死神。

どんなに生きているあなたがみたくとも、あなたの魂を取らないといけません。

けれど、けれど…!

何度あなたの魂を奪おうと思っても!

ダメなんです….!

あなたの笑顔を思い出してしまう….。

私はもうすぐ消えるでしょう。

当然です。死神が、魂を取らずに現世にいるなんて無茶をしているんですから…。

ですから、聞いてください。

覚えていてくれ、なんて大そうなことは言いません。

ただ、一度だけ….

一度だけ、好きだと言ってください。

気持ちが伴わなくてもいいです。

私のことが嫌いだっていいです。

一度だけ…!

ただ一度だけ、私には過ぎた願いかもしれませんが!

好きだと、言ってくださいませんか?」


2 残酷な世界

『世界は残酷だ。』

「ゆい!!!!」

妹が、救急車で搬送された。

「っ母さん!ゆいの状態は?!」

点滴をし、目を閉じて眠っているゆいの手を握りしめた母に尋ねる。

「ゆいが….、二十歳まで生きれない…?」

そこで話されたことは、すごく衝撃的なものだった。

ゆいは、まだ十歳。

俺と七歳差の、歳の離れた妹で、俺はゆいを溺愛してた。

それこそ、友人にシスコンと揶揄われるくらいには。

「治療法が見つかってない….?二十歳まで生きれればいい方…?」

そこでとうとう、母は泣き出してしまった。

俺は、その時、初めて世界を恨んだ。

ゆいは、走ることが大好きだった。

だが、これからは心臓に負担をかけるといけないため、
走ることもできなくなってしまう。

「…母さん、おれ、医者になる。

医者になって、ゆいの心臓を治してやる!!」

『…その時はまだ、希望があったのにな』

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鞠ちゃんのセリフ集 鞠ちゃん @marityann17

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