第7話 サロン ジャンクロード
ジャンクロードは書店に週刊プレゼント・デイの最新刊が並ぶと即座にそれを取ってレジに向かった。こんな下世話な週刊誌など興味はないが、今週号だけは買わない訳には行かない。なにせ今週号には彼女が載っているからだ。
ジャンクロードは購入した週刊誌を持って即座に適当な喫茶店に入ってそのページを探した。彼は週刊誌などの構成が分からないのでそのページを探すのに苦労した。
あった。
サロン・ド・ウィロウのページを見つけると彼は食い入るように読み始めた。彼はマダム・ウィロウに興味など全くない。しかしこのノームの老婦人の質問に多くの若手芸能人が「敗退」して行った事はよく知られている。マダム・ウィロウ対策委員会などという企画が紙面で扱われた事もあるほどなのだ。
「ふむ…」
彼はまずマダム・ウィロウの当然の感嘆に納得した。ニオルちゃんが美しいのは当然ではあるが、それをちゃんと言い表すのは評価に値する事である。
しかしそのすぐ後の記述には大きな不満を持った。ニオルちゃんがハーフエルフだとか142歳であるとかは彼女の本質を理解していない質問である。この老婆はどうやら物事の本質をその目で判断する事ができないらしい。悲しい事である。
しかも彼女の悲しい生い立ちにまで踏み込んでいる。これは差別発言であり強く非難されるべき事柄であった。これはサロン・デ・ウィロウ自体に対する非難活動も視野に入れなくてはいけない由々しき事態であった。
しかし悲しみと共に記事を読み進めるとジャンクロードは大きな驚きを得た。なんとマダム・ウィロウは彼女の水着の絵画について話題を転じたのである。そしてその記事ではなんとその水着がビキニであるという事も仄めかされていた。これはいかん。予想の数倍の予算は必要となる。父から譲られた株券を手放す事も考慮せねば。
「なんかあの人、大丈夫ですかね…」
アルバイトでこの春からこの店で働いている彼女は不安になって店長にそう訊いた。彼女は付き合っていたボーイフレンドが豹変してしまい非常に困ってしまった経験があった。あの客はその時のボーイフレンドと目付きがよく似ていた。
「…もう少し様子をみよう。君はちょっと離れていなさい。応対はしなくていい」
店長はカウンターの中からさり気なくその客を見て彼女にそう言った。せっかく薄給で働いてくれている彼女を危険に晒す訳には行かないのである。
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