第45話 水族館①

「今日は水族館だよ!」

「相変わらず元気いっぱいだな。」

「もちろん!」

 今日も2人でデートだ。なんか今年の夏休み、デート多くないか?なんなら仕事してる両親と一緒にいる時間より陽華と一緒にいる時間の方が長い気がする。実際そうだろうな。少々懐事情が寒くなりかけているがなぜかお小遣いが増えているのとお年玉から出してやりくりしている。

「陽華はお金大丈夫なのか?」

 そこら辺のことを聞いてみると

「心配ご無用!デート行くって言ったらお父さんがお小遣いくれるから!」

「陽一郎さん何やってるの!?」

「なんか義息子のためならしょうがないって。」

「......」

 なんかもう外堀を埋められてる気がする。もうこのこと考えるのやめよう。



「いらっしゃいませ〜。」

「すいません。大人2枚でお願いします。」

「かしこまりました。カップル割引がありますがどうなさいますか?」

 出たよ。この「カップル割引」はデートに行く際の出費には非常にやさしいが人前で「はい、カップル割引お願いします!」なんて言えるわけがな、

「はい、カップル割引お願いします!」

「かしこまりました。」

 この人、人前で堂々と言い放っただと!度胸がありすぎる。

「本日はイルカショーがありますのでよければ見てくださいね。それでは行ってらっしゃいませ。」

「あ、ありがとうございます。」

 ...赤の他人から言われるのは恥ずかしい。しかも心做しか周囲の目が暖かい。陽華はよく堂々としてられるよな。これも美結の影響だろうか?

(陽華の心の内:やばい!勢いで言っちゃったけどすごい恥ずかしい!やりすぎちゃったぁぁぁ〜!)



「わぁ〜!」

「これは、」

 水族館の中は快適で涼しい。そして、少し薄暗い。長い通路を渡った先にあったのは巨大な水槽だった。水上から差し込む光と泳ぐ魚がマッチしていてとても幻想的で美しい。思わず見とれてしまう。隣を見ると陽華もこの美しさに心を奪われているようだ。

「綺麗だね。」

 陽華は水槽を見てそう呟いた。大量の小魚が群れで泳いでいたり、巨大な魚がゆうゆうと泳いでいたり見ていて飽きない。何より、

「そうだね。」

 それらを見ている陽華がとても綺麗だ。いつもは可愛らしさが強いが今回は服も大人しめの大人っぽいからか、大人の色気みたいなのをもっている。

 パシャッ。

 俺はいつの間にか写真を撮っていた。水槽を泳ぐ魚たちと、それらを見る陽華の写真を。館内の暗さと水上の光がいい感じにバランスを保っていてその写真は1つの芸術品のように感じられた。

「撮られちゃったね。」

「いいだろ、別に。」

「じゃあ私も〜。」

 そう言うと陽華は俺にカメラを向ける。仕方がないとはいえ、写真を撮られるのは苦手だから水槽を見る。

 パシャッ。

「えへへ〜。いい感じに撮れたよ〜。」

「よかったな。」

「うん!」

 このあとツーショット写真も撮った。この写真はそれぞれの携帯の待ち受けにした。

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