第43話 プール③

「2人とも楽しんでたね〜!」

 ウォータースライダーを終えてプールサイドに戻るとそこには美結と俊祐がいた。美結はにやにやしながらそんなことを聞いてくる。何を聞いているのかは聞かなくてもわかる。なので、

「そりゃ思う存分な。」

 とヤケクソ気味に答えた。陽華も何を聞かれたかはわかっているようで、その時のことを思い出したのか赤面している。

「ねね。これから4人でまわろうよ!」

 美結がまた突発的に言い出した。今日は陽華と2人でプールに来たんだからさすがに陽華には迷惑だろうと思い断ろうとすると

「いいですよ!」

 陽華の方が即答した。

「いいのか?」

「はい!」

 どうやらさっき2人話してたことはこれだったらしくすでに陽華が了承していた後だったらしい。俺も陽華がいいなら異論はないのでこの提案に頷いた。

「2人ともありがとうね。美結のわがままに付き合ってくれて。」

 俊祐がそんなことを言ってきたので

「いつものことだ。気にすんな。」

 と軽く返しておいた。



 まず俺たちが行ったのは25mプールだ。

「ここで競走しようよ!」

「いいですね!」

 美結が提案し、陽華が返答していた。2人とも元気だな。

「俊佑はやるのか?」

「美結のことだからやるやらないじゃなくてやらされると思うよ。」

「俺もそんな気がする。」

「そこの2人も早く来てよ〜!競争するよ〜!」

 リアルタイムで来たぞ。伊達に何年も幼なじみしてきたわけじゃないよな、俺たち。

「今行くよ。」

「ちょっと待ってろ。」

 俺と俊祐は苦笑いしながら二人のもとへと向かった。




「リレー形式でやろうと思うんだけどどうかな?」

「リレー形式?」

「はい。私と明さん、美結先輩と藤堂先輩のペアで競い合うんです。」

「2人で決めたんだ!」

 美結が自信満々に言った。それさ、俺と俊祐の同意なしだよな。美結は昔からだから慣れてるからいいけど(よくはない)陽華にも悪影響が出始めてるぞ。俊祐は俊祐で「明ね~。」とにやにやしてくるし。こいつらめんどくせぇ。

「はぁ、わかったよ。」

 結局付き合う俺もお人好しだな。



「ルールは簡単!1人25mプールを折り返しで、先に2人目がゴールした方の勝ちne

 !」

「はい!」

「了解。」

「わかったよ。」

 それぞれが返事をして各自作戦会議を開始する。とは言っても順番を決めるだけだが。

「はじめに私がいくので明さんは2番目をお願い。」

「わかった。」

「決まり!」

 向こうも順番が決まったようだ。



 1番目が陽華と美結で2番目が俺と俊祐らしい。はじめの掛け声は俺がすることになった。

「じゃあいくぞ。」

「「は!」」

「よーい、どん!」

 1番目の2人が一斉にスタートした。どちらとも惚れ惚れするような飛び込みだ。

 2人とも運動神経がいいからかなり早い。それでも若干美結の方が前にいる。やはり美結の方が早いか。

 すぐに俺と俊祐の番になる。戦況としては美結・俊祐ペアの方が有利だ。

「っ!!」

「...っ!」

 先に俊祐が飛び込みそのあとに俺が続く。俊祐も文武両道の名にふさわしく、運動神経がいい。当然このままだと負けるだろう。両方が折り返した時点で、

「がんばれー--!!!」

 陽華の応援が聞こえた。するとなんだか力が出てきたような気がする。好きな子の応援で力が出るって現金だな、俺も。

 これもう負けられない!陽華にかっこ悪いところなんて見せられない!

 最後のスパートをかける。俊祐も俺がスカートをかけたことが分かったのかスピードがあがる。その勢いのままほぼ同時にゴールし........



「惜しかったね。」

「面目ない...」

 あのゴールの瞬間を美結が動画に取っていたらしくビデオ判定の結果、

「負けた~~!」

 僅差で俊祐の手の方が先に壁にタッチしていたのである。あれほど勝つと心の中で息巻いてたのに箱を開けてみるとこんなだよ。

 ちなみに俺と陽華は罰ゲームとして全員分の飲み物を買いに来ていた。

「あれは仕方ないよ。私が負けてたんだし。」

「でもさ~、陽華に勝ってかっこいいとこ見せたかったんだよ。」

「そうなの?」

「当たり前だろ。あんなに応援されたんだし。」

 その時のことを思い出す。あんなに応援されたのがうれしかった。1人で回想していると、

「十分かっこよかったよ!」

「へ?」

 思わず立ち止まる。前を歩く陽華の顔は少しだけ赤かった。

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