第36話 帰路と告白
「ちゃんと集中できたね〜。」
「そうだな。」
今俺たちは帰路についている。ご飯を食べた後、しっかり勉強を再開した。俺は宿題を全て終わらせ、他の3人は半分ぐらい終わらせた。終わった時、美結は机に手を投げ出して
『もう無理!しばらくは勉強やんない!』と喚いていた。
ちなみに美結と俊佑は2人で帰ると言ったから別行動だ。一日中勉強漬けだったから甘えたいんだろう。...俺だって疲れたから甘えたい!
とまあそこら辺は置いといてだな。目下の課題は俊佑との約束だ。俺は確かに陽一郎さんや俊介に陽華が好きだと言った。だが、第三者に言うのと本人に言うのとでは全くと言っていいほど緊張感が違う。...まぁ彼女の父親に言うというシチュエーションも別の緊張感があった。それもそれで死にそうだったが。
今の俺は手にすごい汗をかいている。喉もカラカラで水分が欲しいくらいだ。
「あのさ、」
「なんですか?」
俺は立ち止まって陽華に話しかけた。俺と一緒に歩いていた陽華も必然的に立ち止まる。そしてゆっくりと顔をこちらに向ける。夕日に照らされた陽華の顔が輝いてみえる。本当にキレイだと思う。こんな平々凡々とした僕が隣にいてもいいのかと思うほど。
僕は緊張している。人生の中で一番。正直逃げたい気持ちでいっぱいだ。でも逃げるのは問題の先延ばしに過ぎない。そもそも、陽華がずっと俺の隣にいる保証もない。なら、逃げたらダメだと自分に言い聞かせる。それに、もう俺は大事なことから逃げたくないんだ!
「先輩、大丈夫ですか?」
何も言わない俺を訝しんだのか心配してくれる。ほんとにできた子だよ。
俺は息を吸って一言、
「陽華が好きだ」
その言葉はなんの飾り気のない単調な一言だった。だが、それが俺が陽華にしっかり伝えれると思った。
言ったら言ったですでに緊張感は少し緩んでいた。あとは陽華がどう思うかという結果待ちになる。そう思って陽華を見ると、
陽華は泣いていた。
俺は心の中で動揺する。そんなに俺の告白は嫌だったのかと自己嫌悪に陥る。
「す、すまん。気分を害したなら、その、忘れてくれ。」
咄嗟に謝った。女子が泣いているのにあまり出くわしたことがない俺にはどうするのが正解なのかが分からない。
一方、陽華は
「違います、気分を害すなんて、ありえません。」
と言ってきた。よかった。もしこれで嫌われてたら一生立ち直れる自信をなくしていたところだ。
「ようやく、私に言ってくれましたね。」
陽華は涙を流しながら話を続ける。
「ずっと不安だったんです。こんなに私が尽くしているのに先輩は全然私に好きって言ってくれないって。もし、お父さんに言ったことがその場しのぎのことならどうしようって夜も眠れなくて。もしかしたら先輩は他の誰かを好きなんじゃと思って、そこからはもう負の連鎖で...だから、嬉しいんです。先輩が好きって言ってくれたことが、とても。」
全てを言い終わった陽華は少し目が赤いが笑っている。
いつの間には俺は陽華を心配させていたんだな。もし、俊介の助言がなかったと思うと俺は怖くなる。本当にこの関係が無くなっていたかもしれないから。俊介には心から感謝しておこう。
「これで、私たちは正式な恋人ですね♪」
嬉しそうに陽華がこっちを見る。俺も陽華の方を見ると陽華は小さく俺にだけ聴こえる声で
「私も明が大好きだよ。」
と呟くのであった。
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