第34話 親友

 勉強を始めて30分後、すでに1人は集中力が切れていた。

「もうダメ〜。」

「頑張らないと終わらないよ。」

「だって〜。」

「お前はどこまで終わったんだよ。」

「...なんのことかな?」

「とぼけるな。」

 これは思ったより深刻だぞ。

「はぁ。」

 こいつはもうダメかもしれない。そういえばまだ水持ってきてなかったな。持ってくるか。

「水取ってくる。」

「僕も行くよ。」

 俊佑がついてきた。

「こうしてファミレスで勉強するのは初めてだね。」

「そうだな。基本は誰かの家でやってたからな。」

「これも全部陽華さんのおかけだね。新しい体験ができてよかったよ。」

「お礼は本人に直接言え。」

「はいはい。ところでさ、明。」

「なんだ。」

 急に真面目な声で聞いてきた。そのため、反射的に身構えてしまう。

「明は陽華さんのことが好きなのか?」

「は?」

 なんか拍子抜けした。

「なんでそんなことを聞くんだよ。」

「いいから答えて。」

 どうやら曖昧な回答はダメらしい。

「.,....っ、好きだよ。」

 少し恥ずかしがりながらも言い切った。

「へぇ、あの明がそこまでゾッコンとはね。」

「そこまでじゃない。」

「いいや、そこまでだ。そもそもあまり人と関わろうとしなかった明にそこまで言わせたんだ。」

 確かに俺はあまり人と関わろうとしていない。

「でも、それとこれとは話が別じゃ...」

「違わないよ。」

 そう言い切って話を続ける。

「正直に言うと小6の途中から明は全てを諦めきっていたような顔をしていた。何があったかは僕らは知らない。明が話してくれなかったからね。」

「仕方ねぇだろ。誰でも言えないことぐらいあるさ。」

「別に僕は話してくれなかったことを怒ってるんじゃない。あの時と比べて明の顔は非常に生き生きとしている。今の明は当たり前の毎日が幸せだろう。」

 そう言われて初めて気づいた。陽華と付き合ってからしばらくするが、いつの間にか一緒にいることが当たり前になっていた。しかし、それがいかに幸せで幸運なのかということが。

「確かに今の陽華といる毎日が楽しいし、幸せだよ。」

「なら、その幸せを手放すんじゃないよ。」

 今までで1番強く、そして真剣な言葉だった。

「幸せは自分の手で守るんだ。何かあっても明と日比野さんなら大丈夫だからさ。」

「....あぁ。そうだな。」

 きっと今こいつに指摘されていなかったら陽華といることが当たり前になって、取り返しのつかないことにをしていたかもしれない。

「その意気だよ。」

 俊介もいつもの調子に戻っていた。

「それじゃ、早速陽華さんに愛を伝えてこようか。」

「な、なんでそうなんだよ!?」

「すれ違いを防ぐのに1番いい方法がこれなんだ。明も腹を括るんだ。日比野さんだっていっつも言ってるだろう?」

「はぁ。」

 やっぱこいつには勝てねぇな。

「頑張るよ。」

 俺の親友はよく俺の事を見ている。

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