第27話 自信
陽華の家でご飯を食べたあと、俺は陽一郎さんに家まで送ってもらうことになった。俺は断ったが陽一郎さんが夜の道は危ないと強く主張したため俺が折れたということだ。
「今日は何から何までありがとうございました。」
「構わんよ。君は娘の大事な彼氏だからね。」
「あ、ありがとうございます。」
こうして彼女の父親に娘の彼氏と言われるのはむず痒い。
「でも、よく交際を認めてくれましたよね。はじめはあんなになんというか、その〜、迫力がありましたけど...」
「ははは。まぁはじめあった時は変な虫がついておると思ったよ。」
「やっぱりですか...」
だって殺気が滲み溢れてたんですもん!
「だが君は私から目をそらさなかった。」
その真面目な声でちょっとはっとした。
「私は元々顔が少々厳つくてね。多くの人、特にやましい気持ちを持っている者はすぐ目を逸らす。だが君は目を逸らさなかった。つまり、君は真面目に陽華と付き合っていたということだ。ならば変な虫がつく前に君に渡した方がいいと思ったのだよ。」
「...過大評価ですよ。」
自分の声に少し陰が指す。そうだ。僕には過大評価すぎる。だって、僕が陽華と付き合うことになったのは...
「そんなことはない。君はちゃんと陽華と向き合っている。娘のことを大事に思ってくれている。それだけで君は私の中では最高評価だ。」
「陽一郎さん...」
あぁ、やっぱりこの人は陽華の父親だ。
「これからも陽華のことをよろしく頼むよ。」
「はい。必ず彼女を幸せにしてみせます。」
その言葉で陽一郎さんが微笑んだ。
その後、何事をなく家を戻ってきた。未だ両親は帰ってきていない。それが今の俺にはありがたかった。今の俺の顔を見られたら絶対何かあると思われる。
「今日は濃い1日だったな。」
思い返してみれば初めて陽華の家に行って、初めて陽華の家族と会って、初めて陽華の家でご飯を食べた。初めての目白押しだ。そして何より有意義だったのは陽一郎さんとの会話だ。あの会話で少しだけだが自分が陽華の隣にいてもいいと思えるようになった。
元々俺と陽華は正反対な性格だ。俺は面倒くさがり屋で不真面目。必要最低限やれば問題ないと思っている。それに対し、陽華は真面目で面倒みもよく努力家。常に完璧を求めている。それを鑑みればそれぞれの結果が正反対であることは想像にかたくない。だから少しずつ頑張ろうと思っていた。その一歩が勉強だ。ひとまず50位に入ることだ。
何か自信が持てるものは欲しい。そう思うとき俺の記憶がチラつく。もう諦めたはずだ。それでもまだ未練が残ってんのかなぁ。でももう無理だ。諦めた俺にはもうそこに立つ資格はない。それにあいつらに会うことをないだろう。
「風呂でも入るか。」
嫌な気持ちはもう忘れよう。
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