第23話 お勉強会②

 カリカリカリッ

 シャーペンが走る音だけが聞こえる。陽華は元から真面目な性格だし、俺も今回は陽華との賭けがあるから真面目に取り組んでいる。

「先輩、分からないとこがあるので教えてください。」

「いいぞ。」

 俺は二年生だから一年生の範囲なら教えることができる。だから陽華の分からない問題を俺が教える形でやっている。

「ここはこの部分に補助線をいれるとこの公式が使えるんだ。」

「なるほど。補助線をいれるんですね。ありがとうございます。」

 そうしてまた勉強に戻る。この流れを繰り返している。

「さすがに腹減ってきたな。」

「あっ、もうお昼ですね。ご飯の用意をしないと。」

「やっと休憩だ〜。こんなに勉強したのは初めてだよ。」

「受験勉強とかどうしてたのよ。」

「そんなん勉強する必要なくね?高校受験なんて普通に受かるし。」

「ほんとに人間ですか?」

 そんなジト目で睨むな。俺はちゃんとした人間だぞ。

「ただまぁ、他のやつらより地頭がいいのは理解している。」

「そんな程度で終わらせていいものなのかな?」

「いいの。それよりご飯食べたい!」

「分かったわよ。簡単に作れるし、うどんでいい?」

「おう!」

「ちょっと待っててね。」

「俺も何か手伝うよ。」

「大丈夫だからソファーに座ってて。」

「はーい。」




 二人でうどんを食べ終えてから部屋に戻って勉強を再開した。

「そういえば、先輩って分からないとことかないの?さっきから手が止まっまてるとこ全くないから。」

「そうだな。全くないってわけじゃないがほとんどの問題は初見で理解できる。」

「えっ?」

 あっ、このキョトンとした顔も可愛いな。

「......それって本当ですか?」

「あぁ。」

「ちょっとそのワーク貸してください。」

「はい。」

 そしてページをパラパラめくって少し吟味してから

「この問題を解いてみてください。」

「あいよ。」

 すらすら

「結構スムーズに解けるんですね。」

 驚いたように陽華が言う。

「まぁな。このぐらいなら余裕だ。」

「このぐらいって、これ大学入試の過去問ですよ。」

 そう。今俺が解いている問題はワークに載っている大学入試の過去問だ。

「別に難関大学のやつじゃないんだし、普通だろ?」

「普通じゃない!」

 どうやら俺は自分で思っているより凄いらしい。

「これ私の負けだね。」

「だな。」

「勝てると思ってたのになぁ。まさか、絶対勝てると思ってこの勝負にのったの?」

「当たり前だ。俺は勝てる勝負しかはしない。」



「疲れた〜。」

 それから俺たちは三時間ぶっとうしで勉強し続けた。もう頭がクタクタだ。

「少し休憩する?」

「そうしてくれると助かる。」

「じゃあ休憩しましょう。」

 そういって陽華はシャーペンを置いた。

「陽華は疲れないのか?」

「いつもなら疲れますが、今日は先輩がいるので常に集中できるから大丈夫だよ。」

「......タフだな。」

「褒めてる?」

「褒めてるよ。」

「なら素直に受け取ります。まぁ、先輩をがんばったのでご褒美をあげましょう。」

「それはテストで50位以内に入れたらの話じゃなかったのか?」

「えぇ。だから、これは今日のご褒美だよ。膝枕してあげる。」

 俺は硬直した。膝枕だと。そんな憧れのシチュが俺に起こりうるのか?

「そんな顔しなくてもしてあげるよ?」

「そんなに顔に出てたか?」

 気をつけよう。

「それでして欲しい?」

 俺は心の中で葛藤していた。今ここで欲望のままに陽華の膝枕を堪能したいが、それをやってしまってはもう戻れなくなる気がするのだ。そしてうじうじ悩んでいると

「嫌ならそう言ってくれた方がいいんだけど。もうやらないから。」

「して欲しいです!」

 本能の圧勝でした。だってしょうがないじゃん。好きな子からの膝枕だよ?しかも美少女だよ?こんなんで我慢できるかよ!

 陽華はベットに座って自分の膝を叩いた。

「どうぞ来てください。」

 どうやら覚悟を決めなければならないらしい。俺はベットに横たわり陽華の膝に頭を乗せた。鼻腔をくすぐるいい匂いに包まれ、柔らかく弾力があって気持ちいい。

「どうですか?」

「....最高です。」

「ならよかった!」

 おそらく今の俺は顔が耳まで真っ赤だろう。ドキドキしていたがだんだん眠くなってきた。

「少しの間お休みください。」

 その声を境に俺の意識は心地の良いまどろみの中に沈んでいった。

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