第18話 休日デート③

 今、俺らはモール内にある広場を散歩していた。周りを見ると家族連れや学生カップルがいる。子供たちがはしゃいで鬼ごっこやかくれんぼをしている。実に穏やかである。

「平和だね〜。」

「そうね〜。」

「こんな日が続くといいな。」

「私は先輩が隣にいるだけでいいよ。」

「あ、ありがとう。」

 ド直球で言われるのは未だに慣れない。それでも、愛おしさがこみ上げてくるので頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めて頭を押し付けてきた。

「えへへ〜。」

「この笑顔ずっと見てられるわ。」

「ふぇっ!」

 やべっ!声出てたか。さっきの聞かれてたと思うとめっちゃ恥ずかしいんだが。

「せ、先輩にならいつでもどこでも笑顔を見せますよ。」

「ありがとうございます!」

 そのテレながら萌え発言するのはズルすぎだろ!俺の好きなやつどストレートなんですけど!

「そんなに喜んでくれるんだね...何だか恥ずかしいな。」

「ご褒美です!」

「えっ!?」

 おっと、いけない。ついつい本音が...

「私、今とても幸せです。」

「急にどうした?」

「今まではこうして先輩の隣にいるなんて思わなかったですから。」

「それはこっちのセリフだ。まさか学校のお姫様と付き合うことになるとは思ってなかったよ。」

「お姫様はやめてよ!結構恥ずかしいんだから!」

「はいはい。」

「絶対わかってないでしょ!」

「そりゃ分かるわけないだろ。」

 などとあしらっていると

「先輩は私の王子様だから...」

 脳がフリーズして二人の間に沈黙が訪れる。そして、

「...はっ!?今なんて言った!?」

「先輩は私の王子様だと言いました。」

「そうか......うん、確かに言われたら恥ずかしいな。」

 それから再び沈黙が訪れた。非常に気まずい。

「そういえばさ」

 この気まずい沈黙を破るためにわざとらしく声を上げた。

「はい、なんでしょう!」

 どうやら彼女もこの沈黙は気まずかったらしい。

「陽華はどうして俺を好きになったんだ?」

「そうですね。」

「先輩の努力している姿がカッコよかったからだよ。」

 中学のときを思い出したのか顔が若干赤くなっている。

「それを聞いても未だに腑に落ちないんだよなぁ。」

「なにがです?」

「陽華が俺を好きになったことがだよ。」

「そう?」

「あぁ。俺は良くも悪くも目立たなかったし、目立とうともしていない。そもそも注目されること自体好きじゃないしな。だから、あまり努力をしてこなかった。」

 その時微かに陽華の肩が震えたのを俺は見ていなかった。

「それは先輩の思い込みでは?先輩は自分が思っているより努力していたんだよ。」

「それはない。」

 俺の即答を聞いて陽華は驚いている。

「どうしてそんなに即答できるんですか?」

「そりゃ、もっと努力しろと他の奴らに言われ続けたからな。他のやつが俺が努力してないと言うんなら俺は確実に努力をしていない。だからもう一度聞く。どうして俺の事を好きになったんだ?」

 陽華は隠し事をしている。これはほぼ確信を持っていた。

「.....」

 しばらく陽華は黙っていた。そして

「そうだね、確かにじゃないよ。でも今は内緒♪いつか言える時が来たら教えてあげるよ!」

 今日一番の笑顔でそう言ったのだ。

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