安楽死できなかった

運ばれる。荷物のように。

視覚が奪われている。

どのように扱われるのか。

興味と恐怖が比例する。気を失うか、見続けるか。

ガタガタと揺れる音。

起きていても仕方がない。

本当に誘拐されている。

神隠しの行方を体験できる。

そして戻れない。

社会の闇に消えていく。

桜の感覚に刻まれて、世界に伝えられることなく消える。

ゴクリと唾を飲み込む。

意識を閉じる。

どんな痛みでさえ、死ねば終わり。

出来るならば楽に殺して欲しい。

無用な願いになるにしても、願うよ。

桜の意思は其処に集中する。

無駄なことはすぐに教えられる。

輸送が終わり、扉が開く。

冷たい空気が入ってくる。

ガチャガチャと足音。

男たちは知らない言語を使う。

ひんやりと身体が震える。

誰かが私の肌を触る。

そして、電撃。

意識を失う。


赤と青と虹だ、これではまるで。

強烈な痛み。

私は大きく目を開く。

謎の呪文。

私の内臓。

あえっ。

うえっ。

嘘。

意識を失う。


神崎桜は死ぬ。

さようなら。

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