第10話 地獄!!
その日、私は地獄へと向かっていた。
この記念すべき10話目において、文字通り『
さてさて、ふざけた前置きはこれくらいにしておこう。地獄とは、観光名所の『地獄巡り』を指しているのである。
私は新製品を採用頂いた客先に、製品説明を行うべく休日出勤で大分県別府市に赴いていたのだ。
振替休日? 何だねソレは?
しかし、私はこの休日出勤を嬉しく感じていた。別府といえば温泉と、地獄巡りが出来る!
私は超特急で仕事という雑用を済ませると、時計の針は14時を示していた。
「ふふふ、腹が減っては戦はできぬ。地獄巡りの前に昼食だ!」
ここで、怒涛の伏線回収と洒落込もうではないか。
第10話。Ten。天。
「鶏天ダァ!!」
なんと、ここ別府市には鶏天発祥のお店、『レストラン東洋軒』がある。
私が九州に来て2年…九州やる事リストの一つが、遂に叶う日が来たのである。
だがしかし……
「なん…だと?」
私は時計を見た。14時。我が20年代の友、SEIKOの腕時計は狂っていない。
なんと!私の目の前には長蛇の列が!!
これは待つも地獄(地獄巡りが出来ない)
待たぬも地獄(念願の鶏天が…)
『二兎追うものは一兎も得ず。か…』
私は意を決して、いや、胃を決して鶏天を選ぶ事にした。
待つ事60分。遂にその時が訪れた。
「一名でお待ちの…なかと様。お待たせしました」
ハキハキとしていて優しさに溢れる声。これが福音と言うのだろう。
さて、注文は勿論、鶏天定食一択。だが、メニューに溢れる魅惑的な中華料理の数々が私の心を惑わせる。ツヤツヤの点心達にパラパラ炒飯。絶対美味いと見てわかるラーメン。
人は時として心を鬼にしなければならないのだ。
「鶏天定食…………お願いします」
そのオーダーと共に、次回訪問時はチャーハンとラーメンを注文しようと心に決めた瞬間でもあった。
さて、届いた定食を見ていこう。
https://kakuyomu.jp/users/napc/news/16817330652038815087
マーベラスだ。イグザクトリィだ。
聡明な皆様であれば、この表現で充分だろう。
『サクッ、ジュワッ』
あ…溢れるッ!! そして旨味の渦に落ちていくッ!! 更には鶏天をカボス醤油のタレにダイブさせ、それをご飯の上でワンバン。
さぞかし想像力豊かな諸君のことだ、もう口の中が洪水になっている事だろう。
私も罪な男だ。
そんな罪深き私は地獄行き……
「熱っつぅ!」
勢いよく口に含んだ、たまごスープの熱い事!! バチが当たったんだね? このトロミが冷めない理由だね?!
––– 悪いことをしてはいけない。
因果応報って奴は、いつも突然に訪れる。
皆さんも覚えておくと良いだろう。
そんな至福の食事を終えたのは、私の時計の針が15時半を示していた時だった。
「まだだ、まだ間に合う!」
地獄巡りは17時で閉園する。しかし、諦めなければ叶うと聞いた事があった私は、プリウス(社有車)のアクセルを唸らせ、(法定速度は守ってます)血の池地獄、海地獄、坊主地獄の三箇所を見ることが出来たのだ。
実に貴重な体験であった。
その感動を伝えようと写真もたくさん撮ったのだが、この地獄巡りにおいては『風景』は勿論、硫黄の『ニオイ』や温泉が噴き出す『音』の全てが合わさる事で完成されると思う。
これは、写真では伝える事はできないのである。
よって、皆様も機会があれば是非行ってみて欲しい。温泉に浸かって美味しい料理とお酒もあるので、素晴らしい旅になる事は保証しよう。
実に楽しい休日、いや、仕事だった。
営業所のみんなに手土産として、日本で50年以上愛され続ける大分の代表銘菓『ざびえる』を携え帰るとしよう。
そうそう、地獄巡りの件は内密にしといてくれたまえ。
上長としての立場があるものでね。
それでは、また次回お目に掛かれる日を楽しみにしている。
読んでくれて有難う。
(結構ネタは溜まって居るんですが、中々書けないんですよね……)
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