第8話 讃岐!!

 あれから……5年か。

ふっ、変わらない事が、これ程嬉しいとは…


 私は腰掛けたカウンター席で、目頭を熱くさせていた。

 ここは香川県琴平町。

金比羅山の麓に広がる、情緒溢れる街並みは、訪れる旅人の心にノスタルジックな感情を抱かせる素敵な場所だ。

 勿論、仕事で来ている訳だが、例の如く私は『セルフでグルメツアー』を敢行中であった。


『カレーうどんと、小ライスおまたせ』

この店の看板娘こと、お婆ちゃんも、お変わりなく元気そうで何よりだ。


 ……はい?

香川県に来ているのに、『何故カレーうどんなのか』だって?

 それは、あなたが知らないだけだ。


   『手打ちうどん むさし』

私は、ここのカレーうどんが世界一と思っている。それは味であり、ストーリーとも言える。


 ※場所を知りたければ、スーパー『マルナカ琴平店』で調べると良いだろう。

 そのスーパーの隣にございます。


 さて、配膳されたカレーうどんを見てみよう。あなたのイメージはどんな色だろう?

 私が世界一と言うだけあって、黄金色に輝くスープに、玉ねぎや人参など彩り豊かな宝石箱…なんて思ってないかね?

  ……ファイナルアンサー?


 っっ残念!!


 答えは…『黒』だ。 ドロっと漆黒だ。

具? そんなものは溶けてしまって原型を留めていない。

 唯一、すじ肉が暗黒のホライゾンから、恥ずかしげに顔を覗かせているだけだ。

(※画像は近況ノートにて!)

https://kakuyomu.jp/users/napc/news/16816927861469518320


 さて、頂こう。 美味いのはわかっている。それを読者に、如何にして伝えるべきか?

 ––– そう! これは奇跡だ。

黄金比を超越した先にある桃源郷だ!

 えっ?意味がわからない?


 申し訳ない。まず、この漆黒ドロっとカレーだが、恐らくすじ肉のコラーゲンが溶け出したものだろう。勿論、旨味もだ。

 そして、そのすじ肉の量がヤバい。

ルーのどこを掬っても『こんにちわ』して来るのだ。

 更には玉葱や林檎?などの野菜や果物の甘みと旨みが奏でるバランスは凄まじい。

 いや、原型が無いから、何が入っているかわからないんだけどね?

 

 その極上カレーがコシの強いうどんに絡みついて来るんだよ?

 これを奇跡と呼ばず、何という?


 ちなみに、うどんも店内で大将が手打ちしています。 ライブ感満載で観れますので、これも嬉しいポイントですね♪


 よし、それでは伏線回収と行こうか?

冒頭で私は『ストーリーでもある』と言った。

 それは、一緒に頼んだ『小ライス』。

賢明な読者であればお気付きだろう。

 

 ––– カレー ライス。

そして、この怒涛のクライマックスを予見していたかの様に、添えられた紅一点。

 ––– 福神漬。


 どうだ。これ程の重厚なストーリーを、

食事の中で、見た事があるだろうか?


 ……おや? スーツに、黒いシミが……

今から仕事なのに、どうしよう!!


 こうして、オチも回収出来ましたとさ。

めでたしめでたし!


※なかとお勧めの、香川のうどん店。

知りたい人は、是非近況ノートにお越しくださいね♪

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る