第3話 黒穴!!

 唐突だが…

アナタは『福岡ブラックホール問題』という言葉を聞いた事があるだろうか?

 このフレーズだけだと、実に禍々しい毛穴の黒ずみ高齢肌なんて思う方がいるかも知れないが……

 –––– 否っ!!

徹底的に、いなぁ!!


 はぁはぁ…… つい熱くなるのは私の悪癖である。どうか、お許し頂きたい。

 この『福岡ブラックホール問題』というのは、あの有名番組『月曜から夜更かし』において生まれた造語である。

 とどのつまり、一度福岡に足を踏み入れると抜け出せないというものなのだ。

 かくいう私も大阪より単身赴任で、最愛の妻と息子を残し、ここ福岡にやってきたクチであり、此処に住んで一年半、思う所がある。

『大阪に帰りたく無い』


 人生は後悔の連続であるが、言い換えれば『人生は選択の連続である』と、云える。

 これはお馴染みシェークスピアの名言だが、彼はきっと福岡に来た事があるのだろう。(コラ!)

 一度足を踏み入れれば最後、何故、此処に家を買わなかったのか後悔する事になるからだ。

 ここに挙げるは、様々な福岡愛である。


 case1:仕事面。

営業という職柄、時に飛び込みを行う事もある。

 脳裏をよぎるのは大阪での、あの冷き視線と『担当者は居ませんでした!』の一言。

 そして、『全く、担当ジャムってんじゃねえぜ?』と、心で悪態をつく日々…

 だが、福岡は違った。

「ご苦労様、担当が空くまでコーヒーでも飲んでお待ちください」

 これは…夢か?幻か?

※全体的に人が優しい。


 case2:スーパー

 単身赴任の状況下、自炊は必須と言える。

そんな中、最寄りのスーパーで私は目を疑う事となった。

 仕事終わりの19時ごろ…

訪れた鮮魚コーナーで立派なサイズのアジが、そのつぶらな瞳を私に投げかけていた。

「すまない、今日の気分は豚生姜なんだ…」

彼女?の誘惑を断ち切り、精肉コーナーに向かおうとする私の脚が一瞬止まる。

 それは、彼女のパッケージに貼られた価格がそうさせたのだ。

 本日水揚げ!…128円、からの半額…だと?

私は曇り無きまなこで鮮魚コーナーを見渡すと、『ば…馬鹿な!?』と、声を発していた。ほぼ全てのパッケージに『半額』の丸いシールが貼られていたのである。

 中には高嶺の花とも呼べる刺身の5種盛りさえあり、定価480円と十分に破格なのだが、『ここにも…半額シールが…』

 私は軽い目眩を覚えたのだ。

ふらつく足取りでたどり着いた精肉コーナーでも、私は息を呑んだ。

『国産鶏ミンチ……1パック100円…だと?』

※べらぼうに安いのか?大阪が高いのか?

 今後も調査を継続する


case3:女性

 これは書こうか悩んだが、表題の件を言わずして福岡を語れないと思い記載する。

 福岡の女性は美しい。

容姿の整った方が多いのも確かだが、その優しい心と、言葉遣いの破壊力は類を見ない。

 博多弁…その魔性の響きは、ストロング系チューハイ2杯位なら耐性がある私でさえも、一瞬で酩酊させる威力がある。

『だっちゃ』『何しとーと?』

まさに鬼娘ラムちゃん。いや、悪魔的でさえある。

※妻よ、私は浮気しないと心に決めてますのでご安心を…


case4:住み心地

 今住んでいる場所から、繁華街(天神、中洲)まで自転車で20分も掛からない。

 逆を向いて走れば素晴らしい自然が広がっている。(是非、私の近況ノートにある写真を見て頂きたい)

 空港、新幹線のアクセスも近く、コンパクトシティを具現化している。

※初めは着陸する飛行機の近さにビビる。


 語り尽くせぬのは青春の日々だけでは無い。福岡への愛を語ると止まらなくなる。

次回はお待たせ?博多ラーメン特集でもしようか?

 タイトルと乖離していくのはいつもの事だ、どうか気にしないで頂きたい。


「所長〜? 例の資料どうですか?」

おっと、前話で出てきたT君に、提案資料のチェックを依頼されているのだった。

 実にデジタル世代の仕事は早い。

『最近の若い者は…』などと抜かす輩に、見せてやりたいものだ。


 何を隠そう、T君も福岡黒穴ブラックホールにハマった一人である。

 来年、彼女を呼び、こちらで結婚して住むのだとか…

 私も独身ならそうするだろう。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る