27:隷属魔法(アルバード)
魔法省の収穫はあった。
あのオルゴールは、シエラ王女の殺害目的であったこと。
そして有力貴族が絡んでいること。
この二つの事実が明かになった。だが、肝心の有力貴族は誰なのか?ということはわからなかった。いや、正確にはわかってはいるようなのだが、口封じの為の魔法がかけられていた。
「誰だ?言え!!!」
俺は絞めつけた胸倉を、話せるように少し緩めた。
「い・・・言えない・・・言えないんだ!!!」
魔導士はふり絞るように、そう答えた。
「はぁ?ふざけるな!!」
「違・・・う・・・ふざけ・・てなどいない!」
その様子を見ていたライザは何かに気付いたように、
「・・・アルト、この人、言わないんじゃなくて、言えないのよ。」
言わないのではなく、言えないだと?
「・・・どういう意味だ?」
ライザは、俺が締め上げている魔導士に掌をかざした。
「・・・やっぱり。この人、隷属魔法のリンク魔法がかかってる。」
俺は、その言葉には聞き覚えがあった。
「・・・確かアレか隷属魔法の一種の・・・」
「うん、多分誰か一人でもそのことを話すと連帯責任になって、死んじゃうわね。」
「!それも禁呪じゃねーか!何だよ、禁呪ばっかり乱用しやがって!」
俺は頭にきた!どこのどいつかは知らないが、やり方が汚なすぎる!!
隷属魔法とは、今はほとんどの国では禁止になっているのだが、奴隷制度がその昔あったのだ。要は、奴隷が主人に歯向かうことができないように、隷属の魔法でしばり、否が応でも言う事をきかせる、なんとも胸糞悪い魔法のことなのだ。
それを応用した隷属魔法のリンク魔法は連帯責任を負わせることができる、これも胸糞悪い魔法だ。内容は様々だが、今回に至っては、黒幕の名前を誰かが一人でも喋ってしまったら、連帯責任を負わされ、それを知っている全員が何らかのペナルティ課せられる。それがわかっているから、知っていても話せないのだろう。
そして、この場合のペナルティとは、死を表す。
「そう言うわけだから、この人から聞きだす事はできないわよ。」
くそ、せっかく手がかりを得たと思ったのに!!
「くっ!!」
俺は魔導士の胸倉から手を放した。
「・・・今はね。」
そういうと、ライザは妖艶な微笑みで、俺を見据えた。
「もしかして、これ解呪・・・できるのか?」
「んふふふ、私を誰だと思ってるの?黒の魔女の二つ名は伊達じゃないわよ?」
そう言うといつものように、お道化てウインクをしてきた。
「・・・ライザが敵じゃなくてよかったよ。」
「あら?アルトの敵になんかならないわよ、ただし貴方が踏み外さなければね。」
「そうだな、律儀だね。イライザさんは。」
「まーね♪」
「だけど、さすがに禁呪だし、素材も必要になるから、今すぐって訳にはいかないけどねー。まぁ素材は一般に流通してるものだけでは、到底揃わないから、そこはアルト任せるわよ♪」
「あぁそういうのは得意だから、任せてくれ。」
呪いもそうだが、魔術の中には、媒体が必要になるものがある。流通しているもので、補えるものであればいいのだが、難易度が高い魔術になればなるほど、当然素材も希少なものになってくる。
俺が冒険者をしていた頃から、そういった希少な素材、例えば竜の鱗だったり、ユニコーンの角だったりとかの採取はよく行っていた。危険度が高いほど、当然冒険者の高ランクが担当することになっていたので、俺はそういった依頼を受けていたのだ。そして、依頼達成率は100%、採取できなかったことはない!(どやぁ)
「ま、魔女様・・・私達は助かるのですか?」
「まーね♪大船に乗った気でいてよー♪」
ライザがそういうと、魔導士はホッとしたのか、滝のように涙を流した。
「あ、ありがとうございます!もし、この魔法が解けたら、必ず、必ず全面的に協力させていただきます!」
「んふふふふ、期待してるわね♪」
さっき俺が締め上げた魔導士は、今はライザに羨望の眼差しを送っている。
・・・・・あれ?
俺一応主人公だったよな? なんだか、ライザに飲まれてる気がする・・・
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