28:デート?のお誘い(アルバード)
「・・・・とまぁ、そういうことがあった。」
俺は魔法省から帰宅すると、シエラ嬢の部屋にて、事の顛末を話した。シエラ嬢が殺害されそうになった話を言うのは躊躇われたが、彼女の性格を考えたら黙っているのは、得策ではないと判断し俺は包み隠さず話すことにした。
「そう、なぜ幼女に・・・なんて思ってたけど、そういう訳だったのね。」
シエラ嬢はさすがに不安そうな顔をしている。無理もないけどな。
「なんて、恐ろしい・・・」
ユーナさんも、憤りもありつつ不安だろう。
「動機ははっきりとはわからないけど、まぁ大方は当初思っていたのと変わりはないとは思うよ。かといってやりすぎだけどな。」
そう、魔力至上の過激派の仕業なのは間違いない。バランドールで魔力無しである王女が国母になることが、相当気に入らなかったのだろう。・・俺には到底理解できないけどね。
だが、呪殺の呪いをかけたことで、誤算があった。シエラ嬢が『祝福』の加護持ちだったからだ。
「ですが、姫様の『祝福』って一体なんなのでしょうね?姫様何か思い当たりませんか?」
「ん~~そうね~。動物と話せたり・・・」
「できるのか?!」
「いえ、できたらいいなぁって話よ。」
「できないのかよ!(笑)」
「だって、急に『祝福』持ちなんて言われても、わからないもの~。とんと思い当たるふしがないわ。」
今のところ、シエラ嬢も『祝福』持ちと言われても、思い当たるものがないらしい。
「ん~そうかもね。」
ライザが神妙な顔をして、同意をした。
「そうかもって?」
俺はライザに続きを促した。
「今のところは、100年に1人くらいだって話しなんだけどね、実際はもう少しいるんじゃないか?って説はあるのよ。」
「というと?」
「何せ、魔力が関係ないから、誰が『祝福』持ちなんてわからないでしょ?あくまで、目に見える事例をもって判断するしかないからよ。」
「あぁ、そういうことか。」
「???」
うん、シエラ嬢は頭に?マークいっぱいだね、顔に出てるからわかるよ。
「ねぇ、どういうこと?」
俺はわかり易いように説明した。
「つまり、自分では当たり前だと思っていることが『祝福』だったりすると、違和感なんてないから、申告するなんて思いつきもしないだろ?例えばさっきの動物と話せたりも、自分が言わなきゃ、他の人にはバレないからね。そういう意味で100人に一人なんて言われてはいるけど、実際は他にもいるだろうなって話し。あとは意図的に申告しないってのも考えられる。ま、これは滅多にいないんじゃないかって話しだけど。」
基本的には申告されるだろうという考えだ。というのも、『祝福』の加護持ちは優遇されるのでどこの国でも『祝福』の加護持ちを生みだした家族には、報奨金が支払われるからだ。
「なるほどね、わかったわ。」
シエラ嬢も納得したようだ。横でユーナさんもうんうん頷いている。
「それでだ、ライザは解呪できるんだよな?あの隷属リンク魔法?」
「えぇ、できると思うわ。けど媒体をいろいろ揃えなきゃいけないし、魔法陣の準備もしないとだしね。私は魔法省でソレをするつもりよ。媒体に使う大半の素材は街中で揃えられると思うけど、多分一つだけ、厄介なものがあるわね。」
「よし、じゃ素材集めは俺がしてくるよ。」
ライザの言う厄介な素材は大抵レア度の高い魔獣の身体の一部だったりする。こういうのは昔から俺の出番だったからな!
「あ、あの!」
シエラ嬢は突然思いつめたように、声を出した。
「どうした?シエラ嬢?」
「え・・・と、私にも何かお手伝いできることはないかなって・・・」
あぁ・・・気になるよな。何もしなくてもいいって言われても自分が関係してることだし、気になるよなー。
あ、そう言えば調度いいんじゃね?昨夜に思ったことを伝えてみよう。
「シエラ嬢さ、ならお願いがあるんだけど、頼めるか?」
そういうと、シエラ嬢は目をキラキラさせて嬉しそうに、
「私にできることなら、なんでも!」
おいおい、一国のお姫様が何でもなんて口にしたらダメだろ(苦笑)
「なら、俺と一緒にライザの魔術に使う媒体の買出しに街にでてみないか?」
そう、俺は気になっていたんだ。昨夜のシエラ嬢が言っていたことを。
「買い物・・・街に出るの?」
シエラ嬢は不思議そうに首を傾げた。ま、そりゃそーだろな。
「そう、買い物。ライザ、素材をリストにしてもらえるか?あと、それ今日中に貰えるか?」
「できるわよ~」
「よし、ならシエラ嬢、明日は俺と一緒に買い物兼ねて、ついでに街を見物できるだろ?ま、お忍びでお出かけってやつだな!」
「あ・・・」
アルバードは、シエラが全然外出をしていないと聞いて、絶対に自分が外に連れ出してやろうと決めていたのだ。そして、その意味はシエラにも伝わった。
「あら、アルトにしては気が利くわね?」
イライザはアルバードの意図を察したらしく、ニャニヤし始めた。
「アルバード、ありがとう。」
「ま、ついでだ、ついでにな!」
アルバードはちょっと気恥ずかしくなって、ついでと言う言葉を慌てて強調したが、耳が真っ赤になっていることを、シエラは見逃さなかった。
「ふふっ」
シエラはアルバードが自分に寄り添うとしてくれていることに、涙が出そうなくらい嬉しかった。
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