26:王子とお茶会(シエラ)

 アルバード達が、魔法省に向かった頃、シエラはライル王子とお茶会をすることになった。


 なんでも改まって話しがあるとかで、二人で話したいとライル王子から申し出があったのだ。

 勿論、婚約者がお互いいる身なので、完全な二人きりではない。必ず侍女なり、護衛が付いている。

 

 バランドール王宮にある庭にて、その席が設けてあった。

 ライル王子とは、テーブルを挟んで対面で座った。うん、相変わらずキラキラしてて、ザ・王子様!って風貌ね。けど、やっぱりアルバードの精悍な顏の方が好きだわ、なんてことを思っていたら、ライル王子が切り出した。


 「シエラ王女、昨夜の晩餐ではあまり話せなかったね。」


 「そうですわね。今はお互い婚約者がおりますもの、致し方ないのでは?」


 何を言ってるんだ、こいつは!


 「ふふっ痛いところをつくなぁ。」


 あれ?気のせいかな?ライル王子がなんか・・・前と・・・雰囲気が違う? 


 「さて・・・シエラ王女はその様子からして、真の愛とやらはまだ見つかっていないみたいだね。」


 悪かったわね!どーせまだ幼女のままだわよ!


 「何が仰りたいの?」

 

 何となく、私は身構えてしまった。

 

 「・・・そんなに警戒しなくてもいいよ。まるで逆毛だった子猫みたいだよ。」


 そういうと、クスクス笑われた。

 ・・・なんだかイライラするわね。


 「お互い、婚約解消して、そしてまた相手が代わって婚約とはなったけど、正式発表はまだしていない。」


 「そうですわね。・・・不本意ですが、私がまだ元に戻れていませんからね。」


 「・・・単刀直入に言うけれど、僕達やり直せないか?」


  はい?


 「え・・・と、私の聞き間違いかしら?」


 「いや、聞き間違いじゃないよ。僕は君とやり直したいと思ってる。」


 えーーーーーーっ


 後ろは振り向いていないけど、気配でわかる。ユーナもきっと『何言ってるんですか?この野郎は。』とか思ってるオーラがすごく伝わってくるわ。


 「あの・・・どうしてそのようなお話に?」


 「僕なら、今の君でも愛せるし、お互いの国にとっても良縁だろう?」


 そりゃ、あんたはロリコンだからね!(あ、伏せるの忘れた。)


 「まぁ、貴族間で好きだの愛だのと恋愛感情持ち出すのは、政略結婚から外れているかもしれないが、僕は添い遂げるなら、できれば好ましい人と一生を共にしたいからね。」


 「それが私だと?」


 「そうだよ。シエラ王女は正に僕の理想だからね。」


 確かに婚約解消を申し出たのはこちらからだし、ライル王子が幼女になった私を気に入ってるも知ってるけどさ・・・

 

 んー・・・もういいや面倒になってきたな。うん、もういいや。


 「お言葉ですが、」


 「なんだい?」


 「ライル王子、今までというか私が幼女になる前までは、そんなこと一言も仰ってはくださらなかったですよね!」


「あぁ、まあそうだね。」


っ身に覚えがあるようで、ちょっと目を逸らした。わかり易いな!


「わたくし!貴方がそういう趣味の方というのは、わかっておりますが、今更そんなこと言われても全く嬉しくありません!それに!」



私は一呼吸入れた。


「はっきり申し上げて!私、今は好きな人がいるんです!見ての通りまだ幼女ですからね!両想いにはなれていませんけどね!」


 ライル王子が目を向けて驚いてる、まぁそうでしょうね。こんな大きな声で物を申したこともなければ、淑女の礼儀からは大きく外れていますから!

だがしかし!


 「だけど!その人は私が元に戻れるように頑張ってくれているんです!私も両想いになれるよう!振り向いてもらえるよう、諦めていませんから!だから貴方が入る隙間なんてないんです!おわかりいただけました?!」


 私の剣幕に、周囲はシーンと静まりかえった・・・・


 ぜーはー一気にまくし立てたから疲れたわ。



 ぷっ・・・


 ん?笑い声??


 「ぷっ・・・ははっ、あははははははっ」


 きぃー!何笑ってるのよ!このロリコン野郎が!


 シエラはすっかり伏字を忘れていた!


 「いや、失礼。なんていうか、シエラ王女がこんなに面白い人だったとは。」


 「それはどーも!」


 ふん!猫かぶりはやめよ、やめ!


 「だけど・・・その方が僕は好きかな。」


 「え?」


 「いや、もう無粋なことはやめよう。シエラ王女の気持ちはよくわかったよ。これで潔く諦めよう。」


 わかってもらえたのかな?


 「それなら、いいですけど・・・」


 「・・・・もしかしたら、君の素をもっと早くに知っていたら、また違ったのかもしれないな。」


 そう言うなり、ライル王子は私の顔をジッと見つめた。


 「え?」



 「いや、今更行っても詮無きことだな。」


 なによ、急に物分かりよくなっちゃって。まぁいいわ、面倒なことはこれ以上ごめんだし。


 「シエラ王女、もしアルバード卿に見込みがないようだったら、僕で良ければ待つよ。」


 あんた、さっき諦めるって言ったやないかーー!


 シエラはあまりの腹立たしさに、どこぞの方言になっていた!


 「ミランダ様がいらっしゃいますでしょ!」


 何考えてんだ、こいつわー!


 「ミランダ嬢か・・・彼女は・・・」


 そういうと、ライル王子は一瞬寂しそうな顔をした。

 あれ?何か歯切れが悪い?


 「いや、何でもない。邪魔したね。恐らく・・・今日は何かしらの進展があると思うよ。」


 !!


 「ライル王子、今のはどういう?」


 「ふっ・・・」


 意味深な言葉を残して、ライル王子はお茶会の場から去っていった。



 何なのよ―――!!

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