19:再びバランドールへ~中編~(アルバード)

 イライザに言われて、甲板に出てみたら、何だかわからないけど、俺はシエラ嬢を怒らせているらしかった。


 『アルバードのバカぁああああ!』


 えーと何かしたっけ??(汗)


なんかこういうの初対面の時もあったような・・・まぁそれは今は置いておこう。



 「え・・・と・・・俺何かしたっけ?(汗)」


 現時点では、身に覚えはないんだけど、もしかしたら知らぬ間に何かやらかしたのかも知れないんで、シエラ嬢に聞いてみた。


 「・・・・・」


 シエラ嬢は、視線を合わせないように、何ともバツが悪そうな顔をしている。

 うーん、言いにくい事なのかな?


俺はシエラ嬢の目線似合わせようとしゃがんだ。


「ごめん。シエラ嬢、俺もしかしたら何か気に障ることしちゃったのかな?」


「・・・・・」


シエラ嬢はまだ答えない。


「ごめん。俺ガサツだからさ、気付いてないけど、何かやらかしたのも知れないな。ごめんな。」



俺はそう言うと、伸ばした手をシエラ嬢の頭に乗せようとした。頭を撫でようと思ったからだ。


だが・・・



パシンッ!!


「!」


その手はシエラ嬢に振り払われた。

まさか、そんなことされるとは思わなかったし、やっぱり俺相当シエラ嬢が怒るような何かをやらかしてしまったんだと、確信した。


 「私を・・・」


よく見ると叩いたシエラ嬢の目から涙が零れそうになっていた。


 「私を・・・子供扱いしないで!!」


 あ、だから怒っているのか。


 「ごめん、俺、そんなつもりじゃ・・・」


 「わ、私だって、好きでこんな見た目してない!アルバードの・・・アルバードのばかぁ!!」



 そう言うと、シエラ嬢は駆け出してしまった。


 「ちょ、待てって!!」


 これは・・・とにかく誠心誠意を持って謝らないと!!

 俺は一瞬惚けてしまったが、慌てて追いかけた。


 つい見た目に惑わされるけど、中身は18歳の女の子だもんな。

 俺子供は好きだから、ついついそういった扱いになっていたのかもしれない。悪い事しちゃったなー。



 アルバードはそう思っていたが、本当のところは、シエラの癇癪だった。

そしてその事はシエラ本人もわかっていた。八つ当たりをしていることも、アルバ―ドが何も悪くないということも。




その様子をユーナとイライザは船室のドアからこっそり見ていたのだが・・・


 「あちゃー失敗ね。」


 イライザは天を仰いだ。


 「作用でございますね。私も姫様があのようになさるとは驚きました。」


 はぁ、とユーナは溜息をついた。


 「けしかけた責任感じるから間に入ってもいいんだけど・・・」


 そう、シエラが甲板に佇んでいたので、二人きりになるチャンスだと、アルバードに行ってもらったのだが・・・思っていた反応と大きくかけ離れた事になってしまい、さすがのイライザも焦った。


 「う~~色恋沙汰って思ったより難しいわね~」


 「はい、同感でございます。」


 「アルバード様が追いかけましたから、もう少し様子を見ましょうか。」


 「そうね。けど、私も後で二人で謝っておくわ。」


 ユーナは、見た目は自分よりも若いが実際は年上なのに、シュンと心底申し訳なさそうにしているイライザの様子を見て、なんだか微笑ましくなった。


 「そうですね。イライザ様なら大丈夫ですよ。」


 あの二人が怒る訳がない、そう確信をもって答えたのだった。

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