18:再びバランドールへ~前編~(シエラ)
アルカディア王国からバランドール王国への渡航の為、今は海原を航海する船上の甲板にシエラはいた。
シエラは、海を見ているようで、実際は謁見の間でのことを思い返していた。
『俺が必ず王女様をお守りします!何があろうとも、俺は絶対に貴方を守り抜きます。それだけは信じてください!』
そうよね・・・私は王女だから守られるという当たり前の立場だし、それに婚約者だものね。そういうことだよね・・・。
聞いたあの時は舞い上がっていたが、よくよく考えれば、立場上でのことだと、シエラは冷静に考えることができた。
だって、好意からきてるなら、私はとっくに元の姿に戻れているはずだものね。
事実まだ戻れていないのだから、アルバードが私のことは政略結婚の婚約者として、王女として守ってくれるってそう言ったに過ぎなかったのに・・・
「浮かれちゃってバカみたい・・・」
思わず声が漏れてしまっていた。
相手の気持ちを探りたくなくても、元に戻れないことから、自分がアルバードから恋愛感情を持たれていないことは否が応でも知らされることに、シエラは憂鬱になっていた。
あの謁見の間のあと、元の姿でシエラは、晩餐時に現れた。
アルカディア王は涙ながらに喜んだ。
「おぉ・・・シエラ・・・その姿は・・・良かった!本当に良かった!」
だが、シエラの片思いの為に、夜にしか戻れないことを伝えると・・・
「うーむ、そうかアルバードがな。」
「こればっかりは仕方ありませんわ。」
「うちのシエラの何が気に入らないんだ!!」
と、突然憤慨し始めたが、
「あー悪いけど、アルトは昔からそっち方面は激ニブだから仕方ないわよ。」
と、イライザが食事をしながら言うと、項垂れてしまった。
イライザは、アルバードとは何度かパーティを組んでいた時に、実際アルバードがそこそこモテていたのは目の当たりにしていた。だが、当の本人はそういう事には無頓着だった為、相手の好意はすべて親切心からきているもの、と解釈していたのを知っていたからである。罪な男だなと何度も思ったと、この場で語った。
「浮ついた奴ではないというところは、よくわかるが、しかし・・なぁ。」
王も呪いの中途半端な解呪に、複雑な心境であった。
「まぁまぁ王様!私が付いてるんだから!事件解決は大船に乗った気でいいわよ!」
「そ、そうか!魔女殿頼むぞ!!」
「まーかせて!」
イライザはそう言うなりふんぞり返っていた。
ちなみに、シエラの母は既に他界しているので、この場にはいない。後妻の話しもあったのだが、アルカディア王は王妃に一途だったがゆえに、その後も独り身を続けている。
う~そうよ!アルバードが私を好きになってくれていたら、こんな面倒なことに、わざわざまたバランドールなんかに行かなくてもすんだのに!!
シエラは頭ではわかっていた。かなり理不尽な怒りだということは。
だが頭ではわかっていても、感情とは理性で制御ができない事もあるのが人の性と言うもので・・・
「アルバードのバカぁああああ!」
シエラは思わず海に向かって叫んでいた。
しかし間が悪かった。
「え・・・と・・・俺何かしたっけ?(汗)」
その声に驚いて、シエラが振り返ると、真後ろに気まずそうにしたアルバードが立っていた。
しまったぁあああ!ついうっかり心の声を叫んじゃった!
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