第5話 再会の形

 社会人となった僕はとあるCDショップを訪れていた。

 目当てのアルバムを買いにいくためだ。

 アルバムのタイトルは「カンパネルラにはまだ会えない」というものだ。

 すでに予約はオンラインですませてあり、レジで受けとるだけだ。

 普段は通販なんかですませるが、このアルバムは店頭特典があるため、店舗で受けとることにしたのだ。

「特典はアーティストポスターになりますね」

 ショップ店員がそう言い、なれた手つきでレジ袋にCDアルバムとポスターを入れていった。

 会計をすませた僕はその場所を離れる。

 買い物をすませた僕に後輩の鈴木花梨すずきかりんが駆け寄り、僕の腕に自分の腕をからめた。

「先輩も好きですね」

 僕よりも背の高い彼女は背を屈めながら言った。

 服の上から花梨の暖かい体温がつたわる。

「今回はポスターがついてくるからね、絶対ゲットしなければいけなかったんだよ」

 僕は言った。

「また木崎林檎のポスター部屋にはるんですか?」

 ぐっと僕の手を花梨は握る。

「いや、今回はコレクションにしてファイルにいれとこうかな」

 僕は言った。

 花梨が部屋にポスターを張るのをいやがるので本当はそうしたいが、やめておくことにした。

「そうですか」

 そう言い、ほっとした表情を花梨は浮かべた。

 まったく芸能人に嫉妬するなんて子供じみているな。

「先輩が買い物をしている間に私も下の食品コーナーでこれ買ってきたんですよ。マンションに帰ったら食べましょう」

 そう言い、花梨は僕に洋菓子店の紙袋を見せた。

 それはアップルパイが有名な店の紙袋であった。

 さすが気が利くな。

「いいな、帰って食べようか」

 僕は花梨の手を握り返し、そう言った。

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初恋の果物はどんな味でしたか 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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