第17話

最近,古都とか古城巡りに嵌っている.

触れてみたくなるけれど,

こういう類の物は触れてはいけない事を知っているから,

触れられない事自体が苦痛ではない.

寄って観る事が出来るだけ嬉しい.

あまり楽しくないかなとか思うのだけれど,

ルカちゃんに一応声掛けたら一緒すると言うから,

一緒に巡る.

前も歴女という言葉が流行ったりしていたから,

嵌れば嵌るのだろう.


それから,時々はショッピングもする.

女の子はショッピングが好きなのかなと思っているけれど,

ショッピングの方は淡々と過ぎる.

行っても遠慮しているのだろうか…

本当にさほど興味がないのだろうか…

どの服を見ても同じ反応.

ワンピースが個人的には好き.

つい「似合ってる」と言ってしまうから,

気を遣ってだろうか,いつもワンピースをルカちゃんは選ぶ.

いつも可愛いのだけれど,可愛さが2割増しとなったようです.

洋服を室内干しにする事が,何だか引っ掛かっていて…

何だかパリッとしない気がして,

お日様の香りがしなくて,

駄目.

リサイクルに送って,結構買い物をしてる.

乾燥機にかけてしまう事も手なのだろうけれど.

楽になるだけで,根本的解決ではないから.

そのため,

おひさまの香りという柔軟剤が気になっている.

いつか買ってしまっているかも.


古都巡りの話に戻るけれど,

現地で…(現地でという言い方も何だけれど)

何か食べようと思えば,ベランダに届く.

ご当地もの.

上手く出来ていて,当時の物も器用に作られて飛んでくる.

美味しいかどうかは別…

でかい握り寿司は美味しかった(結構高かった.),

昔の1貫は妙に大きかったのだねと食べながら思えた.

当時の製法で作られてるので,

今の食べ物がいかに美味しい物になっているのかが凄く分かる.

あぁ,この間,

ご当地ソフトクリーム買った時,凍っていて,

解凍時間忘れてしまって,2人で半分こして飲んだ.

甘いだけの素材に戻っていた.

毎日,何かしらあって,勢いづいて過ぎていく.



大学も始まった.

形上の入学式も済ませた.

ご両親が揃って写真撮ってる所を見ると,

少し心の中が疼く.

両親は全て記憶の中でしか動かない.

いいんだ.

全部捨て,自分ひとりの人生を選んだ.

自分だけのために.

願ったり叶ったりだ.

これ以上何を望むという.

結構歩き回ったけれど,

歩かずにボタン一つで場所が切り替わる事が出来るのだった.

もっと早くに気が付けば良かったのに.

スーツのワイシャツが,じっとり汗で滲んでる.

靴も,かっちりしているから…余計にね.

スニーカー履きたい.

スーツにスニーカー…悪くないよね?

それっぽい物を選んで買っておけば良かった.

中学の時は,ワンタッチネクタイだった.

引っ掛けるタイプ.

ちなみに高校は学ラン.

皆で同じ格好する事で,連帯感?

格差を見せないため?風紀乱さないため?

楽だから?同じだと落ち着くから?

きっと見ている立場で違うのだろう.

今となっては,どうだって良い事.

今着たらコスプレでしょ.完璧.

だから,ネクタイを結ぶ事,慣れていない.

ルカちゃんが

「やってみましょうか.」

と言う所を制して自分で悪戦苦闘.

外したら,あれをまたしないといけないのかと思うと,

そっと,このまま.

きっと,反復は巧くいくと思っているけれど.


休み時間,話しかけてくる人.

見た事の無い髪の色…

おぉこれが,あのルカちゃんが言っていたタイプか.

話しかけては駄目な人だよね?

あれ?

僕今話しかけられてる…

片手を『あなた』というジェスチャーをする.

「自分?」

と当人を指さしながら言われた.

頷く.激しく.

口の前で,手をくちばしのような形にして

前に出しながら広げる.

「話す?」

うんうん.そうそう.

口の前に指を持ってきて,ばってんにする.

「だめ?」

うんうん.最後に首を傾ける.

目の前の人が,

「あぁ話しかけたらだめなんじゃないかって事?」

首が振りきれるのではないかという位,

上下に動かした.

見ていたら,

相手が笑い始めた.

「こっち話しかけてるのに,

話せないなんて無理なルールじゃないですか.」

続けられた.

「話しても大丈夫ですよ.」

そうなの?

「すみません,こちらのルールに慣れていなくて.」


「学長が甚く貴方の事を話していたから,

有名人ですよ.」

「…そうですか.

分からない事だらけなので教えてくれると有難いです.」

本当に.


「自己表現の方法なんて様々ですから.」


「そうなの?」

首を傾けて,こちらを見ているような見ていないような視線を感じる.

そして,おもむろに口を開かれた.

「決めかねてて黒?

知らなくて黒?」

あぁこれね.

髪の色.

「知ってて,黒.」

「そうなの?」

同じように答え返す,この人なんて名前だろう.


「僕,渡会リョウ.」

「よろしくー.」

軽いし,名乗っても名乗らない…

「あと,重なって見えてる人って,重なってる?」


「あー自分も重なって見えてますよ.

多分,バグ.

実際はどっかから繋いでるだけだから,

重なってないけど.」


「あのさっ,な…」

「あ,教授来ましたよ.

また.」

隣空いてるよっ…

あっあぁ元居た所へ戻っていったのか.

あぁ…あの人…名前何です?

名無し?

個性あるにしても程があるよね.

教授が点呼とっていくけれど,

どこから誰の返事が飛んでるか把握は難しかった.


一般教養から受けている.受け直している.

1年目は,こんな感じで過ぎていくのだろう.

般教,眠る前に,あらかた済ませてきたのだけど.

も一回する羽目になる.

単位とか紛失だ.

英語などの言語系も普通に腕時計がしてくれる.

別に今ドイツ語とかとらなくて良い.

なにそれ,今はカルテ英語だよとか,

昔,第2言語選択で言った気がする.

みんな普通に話せなくとも,バイリンガルトリリンガル.

もっと.それ以上.

世界中の言語網羅.

ほとんど覚えなくて良い.

知る事は必要だけれど.

楽しそうに色々な言語で話している,

見た目,髪の色がそれぞれの純日本人が,

あちこちにいる.

腕時計していないから,

目に入れているか頭に直接入れている人たちか.

落ち着いたら,頭に入れて貰おうか.

少々怖いけれど.


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