第15話

「出て,見てもいい?」


「線の内側には入らないように

してください.

危ないですから.」


何だか電車のアナウンス思い出した.


少し小走りにベランダへ急ぐ.

日も落ちてるから,

紫外線は気にしなくていいし

沢山並んだ高層マンションの灯りは綺麗で,

そこに誰かがいて

生活してるんだなって思った.

月も1つ出ていて,

未来に来たからって月が2つになったりは

しないんだなって思って笑えた.


ほぉ.

ベランダに四角く小さいエアポートみたいな

空間がある.

「中継場所が近いので

すぐ届くと思います。」

ルカちゃんの声が後ろから聞こえた。

ベランダの手摺りにもたれて、

周りを何処となく眺める。

「一緒にベランダ出ない?」

ちょうど室内のルカちゃんに視線を合わせようとした時、

どこからかドローンのようなものが飛んできたようで,

気が付くと四角い箱をベランダに優しく置いた.

帰っていく所を見る分には、

車両を走る中空の少し下を飛ぶのかなっていう印象。

知らないけど。


「これ…」

言うと同時にルカちゃんが持ち上げようとしてた。

「待って待って待って。」


「置いて?手を放して?」


静かにルカちゃんが従ってくれる。


「いい。

こういうの僕がするから。

手伝って欲しい時は、

きちんと言うから。


何でも率先してしようとする所

とても良いと思うんだけど。

…うん。」

何か上手に伝えられない。

めっちゃ買ったから、それなりに箱から重さを感じる。

馬力あるんだな、今の小型輸送機。

軸ぶれてなかったし、水平保ってたし。

このまま、テーブルまで置いてくれりゃ良かったのに…


ブーブー.

黒い腕時計が鳴ってブルブルしてる.

何?

右手深く箱の下に手入れ込んで,

肘で箱押さえつけながら腕時計を見る.

何々?

酸素低下って.

そんなに苦しくないけど.

深呼吸してみる.

はぁー脅かすなよ.

むしろ,音と振動で心臓がギュッとしたって.

「ルカちゃん.僕の腕時計鳴ってる.

ぶるぶるしてる.」


「中に入ってください.」

中に入ったら,ベランダのドアが自動で閉まった.

昔だったら,こっち入っても,

ここの立ち位置は開いたり閉まったりしてたのにね.

今のドアって賢い.優秀.


「地球上の水位が上がってて,

土地はかさ上げしてるんです.」


「ん?うん.」

あぁ山登りした感覚かな。


「酸素は相対的に少なくなってますから.」

地面が水に浸かった分、緑が少なくなってるんだろうね。

「うん.何かバロメーター的なものかな.

思ったより苦しくなかったんだけど.」


「外で負荷をかけたからかもしれませんね.

研究所にもデータ飛んでますので,

あんまり長いと連絡が来ますよ.」


「ふーん,そうなんだ.」

監視までは感じないけど,少々面倒.

大事な検体だもんね.

まぁいいや.

買った物,確認しよう.


「気をつけないと…

くたばります。」


「あぁ…だめだめだめ。

その口調は。

女の子でしょ。」

「それも流行りませんよ。」

「あぁ…うん、まぁ。」


箱は見た目が木目調、

蓋は軽いけど強度がありそう。

コンコンしてまわる。

蓋と本体の箱多分同じもの。

これかな新素材。

開けると、買ったものが入ってた。

2人で覗き込む。

うわー

パン今食べたい。


「あ…」


「えっ!?何?

不具合?」


「パン届いちゃいましたね…」


「うん?

買ったからね…?」


「時間指定で焼き立て届きます。」


えっ!?

それマジ?


「これ、今焼き立て?」


「ですです。」


そうかー焼き立てなのか。

じゃあ、もう食べるの一択でしょ。


「食べよ食べよ。」


「パンも食べた事ないので…」


ほー尚更食べなきゃでしょ。


「もう皿いいや。

手洗おー。」


カレーパンいこ。

本当は真ん中を

ルカちゃんにあげたかったけど、

初は下からも大変な事になりそうで

半分に割った。

これ…

熱いやつだ。

熱々芸やってる芸人さん

まだいるのかな、なんて思ったりもした。


「手べたべたになるから

包みの方あげるね。

食べきれなかったら食べるから

食べられるだけ食べてみて。」


御免、

もう様子とか確認してられない。

いただきますっ。


うまっ。

カレーパンは…

変わらないし、

やっぱ旨いし、

旨いは正義だし。


「いただきます。」

って聞こえた。


チラッと見ちゃった。

熱そうに食べてるとこが

何かいいな。


うわっ。

自分の手で受けながら食べたけど、

パラパラ落としてるし。

持った手べとべとだ。


手が止まって困るルカちゃんが

目に入る。

「もう食べられない?」

申し訳なさそうに見る

ルカちゃんが気の毒になった。

食え食え言ったの僕だもんね…

「美味しかったのですが…」

うんそう、美味しかったよね。

何だか聞いて嬉しくなった。


「手がべとべとで

パン粉まみれなんだよね僕。」


「はい。」


「まだ食べられるよ。

でも動いたら汚しちゃいそう。


口元まで近づけて?」


あはは。

何だか楽しい。

王様気分で食べ終わった。

手は洗えばいいし、

自分で食べたら良かったけれど、

嫌な顔されなかったし

まぁいいじゃないか。

御馳走様でした。


何だかあんまり考えなかったけれど、

初めての食事って

お粥とかからじゃないかな。

お互いに。

お腹壊さないといいなーとか思った。

そりゃぁもう

ガチで美味しかったけれども。

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