第14話

一通り食べるの見せたから,

「自由に食べて.」

声掛けると,

「はい.」

と返ってきた.


時々見ると,食べているから

大丈夫かなって思いながら,

食事を済ませた.


少し気になってはいたけれど,

「全部は食べられなさそうです…」

と言うので,

食べられない分は僕が食べた.

聞くと,

食べられない分はゴミでは無くて

堆肥として循環させるらしい.

自宅でやるひともいれば,

収集して貰う人もいれば,

という感じらしい.


「冷蔵庫,何も入って無いから

買い物しなきゃだ.

コンビニとかあるのかな.」


「お買い物しときましょう.

ソースを買いましょう.」


おぉ,覚えてたんだ.

そんなしょっちゅうトンカツ食べないから

急ぎはしないけど.

それよりパン買っときたい.

朝はパン食べたい.


「朝は,パンが食べたい.」

あ…

何だか我が儘な子どもみたい.

ちょっと恥ずかしい.

「牛乳も飲みたい.」

ぶ…

何だか言いながら笑えてきた.

手足ばたつかせてないだけ

まだマシか.


「はいっ買いましょう。」

ルカちゃんが笑ってた。

「リョウさん何時に起きます?」


何時だろう.

めちゃくちゃ寝てたから,

寝られるのかな…

また7時位いっとこうか.


「7時くらい.

起きられるか分からないけれど.」


「その頃に届くように手配しておきますね.」


「うん…

じゃあ,お願い.


買いに出るなら一緒行くよ.

心配だし.」

何買うか悩みたいし.


おぉ…

変な事言っちゃったらしい.

ルカちゃんの動きが固まった.

言っていいのか悩む顔かい?

「…

気にしないから言ってよ.」


「このパネルで…」

壁のパネルは取り外し可能なタイプらしい.

立ち話で覗き込んでいたので,

「あっちのソファーに移ろうよ.」

声をかける.

「座って?」

僕が座るまで座らないから,

いつか自由に,

この家で過ごしているルカちゃんが見たいなと思った.

「どのお家にもあるのが,こちらのパネルです.」

ルカちゃんが言う.


パネルの中にバーチャルなお店があった.

指一本で真ん中のカゴに入れていく.

ほー.

面白い.


「あちらの部屋でもお買い物出来ますよ.」


「うん?」


白い部屋に机と椅子があった部屋に移動する.

無言で机と椅子を移動させようとし始めたので,

「僕が移動させるよ.」

と声掛けて代わった.真ん中から隅に置いた.


部屋のパネルを操作すると,

部屋が一瞬にして店内に変わる.

やばい.

お店に入ったような臨場感.

香りも流れてきそう.

持ち上げる動作をすると,

持っている錯覚のカゴに入る.

間違ったと思えば,カゴから戻せる.

カゴを持った人の速度に風景が

合うようになっているようだ.

「ちょちょ…

ルカちゃん.

腕に摑まって.

何か面白くて気が焦る.」

気が付いたら,遥か彼方に置いていきそうだった.


肉買っとこ.

肉,肉.

何か適度に野菜買っとくか,

米と.

ハムとベーコン.

卵だ.

あ…お豆腐とか納豆食べたい.

牛乳と…

ヨーグルト.

あ…

プリン食べたい.

パッケージ昔と何気に違うんだけど,

何か分かる所がデザイン秀逸だよね.

同じデザインの商品もある.

こういうとこ,何かいいな.

お…

「ルカちゃん何か欲しいもの無い?」


「特にないです.

あ…」


「うん?」


「ソースが気になります.」


「あぁ,そうだったね.

でも,ソースは単体で食べないから,

冷食で買っとこうか.

出来たものと揚げるやつ,

どっちがいいかな.」


はてななルカちゃんに

実際見せた方が良さそうだなと,

少し上の看板見ながら

冷食コーナーに向かって歩く.

歩くと周りが動いて面白い.


「こっちはレンジで調理するタイプ.

こっちが油で揚げるタイプ.


あぁ,そもそもトンカツ大丈夫だった?

食べられそう?」


「今日のお料理どちらも食べた事ありませんでした.」


「そうだよね…


うちさぁ,レンジやフライヤーあったっけ.」


「さぁ…」


さぁ…だよね.

やっぱ揚げたてが美味しいだろうから,

油も揃えて揚げよう.


あとは…

パンでしょ.

パンコーナー…

あっちだね.

これさ,

部屋の大きさ決まってて

店の大きさ歩いてたら…

いつか壁にぶつかるよね.

どうなってるんだ?

後で聞いてみるか.

それが,

ぶつからない不思議.


「パンどれにする?

好きなの選んで.」

あーカレーパン美味しそう.

ソーセージパンと,

食パンも買っておこう.

ジャムいくか.

「ジャム何にする?

いちご?マーマレード?ブルーベリー?

全部いっとく?

全部いっとこうか.」


「どれも食べた事が無いんです.」

困った顔のルカちゃんに,

「同じのにしよっか.」

声掛けると

「お願いします.」

と笑った.

トングもイメージでさ.

素手で実際は

やってるんだけど,

気分上がるな,これ.

パン屋にきたって感じで.

今,全く関係ないけど,

この状態でサバゲやったら

臨場感で死んじゃうんじゃないんだろうか…

怖すぎる.


めちゃくちゃカゴに入れたけど,

小さくなったりして普通に

覗いたら何が入ってるのか

余裕で分かった.

これをどうやって買うんだろう.

レジどこ?どこ?


「お会計したい.」


「お買い物終了で大丈夫ですか?」


「うん.

少し楽しみ過ぎたかも.

結構,入れた.」


「カゴを少し持ち上げて,

空中に置くような動作をしてみてください.」


空中に置く?

「かご落ちて,中の物ぶちまけない?」


「バーチャルですから.」


「あぁ…」


まぁ,うん.

やってみましょうか.


かごが,ふわっと空中に浮いて,

画面に品物と金額が出てくる.

確認するみたいな表示の方を

指さすと,

クレジットの表示が出て,


「もう繋いでいますから,

選択したら自動で購入できます.」

そうルカちゃんが言った.


「便利だね.」

指さして決定すると,

かごの中身が自動で袋の中に入る

デモを見せられた.


「買ったみたいだけど

どうなるの?」


「ベランダに届きます.」


ほへー.

ベランダに?

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