第13話

「箸使った事ある?」


「箸?」


「その長い棒2本.

僕結構上手いよ.よく褒められてた.」


最後の方あまり聞けてないっぽいね.

頭グルグルなってそうな感じなので,

これ使った事無いやつだ.


「今日はスプーンでいいんじゃない?

フォークと.

どこか入ってるのかな.

食器棚の引き出しかな?」

立ち上がって,あちこち引っ張って覗くと

ビンゴ.

同じマークのカトラリーを揃えて渡すべきか.

ドットと…

見つからないな…

無地のものを.

こういうのは同じものを揃えておく方が

いいな.

今度から,そうしよう.

カトラリー…結構頑丈そうで壊れ無さそうだけど.


「これ…」


「うん?」


「小さい子が使うものでは…」

食べないのに,知識はあるんだ…


「大丈夫だよ.

小さいし.」


あぁー

失敗.

待って待って.

そんな顔しないで.


「あぁー違う違う.

こんな事は小さい事だし.

何を使おうが,

美味しく食べられたらいいんだよ.」


名誉挽回.

よくやってる僕.

にっこり笑い合いながら,

「よし気を取り直して!

せーのっ.」


「「いただきますっ.」」

声が心地良くハモって,

自分の食事よりも,

ルカちゃんの初めての食事が

どうなのか気になって

気になって

見つめてた.


ルカちゃんも僕を見てる…

そうだよね…

同じようにして貰った方がいいのか.


んーっと,

ご飯とお味噌汁と

煮物とトンカツか.

三角食べ…

とか今するのかな.

親から言われてたけど.


個人的には

汁物から頂くと

ご飯が箸につかなくていい.

お汁もののお椀を持つと

ルカちゃんも一緒に持ち上げる.

うんうん.

すすると,

何だか体中に沁み渡った.

はぁー

美味しい.

静かに飲むの難しいよね.

今はいいよ.

楽しく食べよ.


里芋と人参かな.

煮物も美味しかった.

スプーンでそろりそろり

持ち上げていたので,

「フォークの方で刺していいよ.」

と言った.

刺し箸はマナー違反だった気がするけれど,

フォークだから.


ご飯茶碗を持ってご飯を食べる.

あぁ,

フォークでもスプーンでも良い方でいいよ.

口に頬張りすぎだよ.

何だかシマリスを見ているようだ.


トンカツはソース欲しいよなぁ.

「冷蔵庫開けても?」


「開けてみましょうか?」


「んー…

いいや.

自分でやる.」


扉に手を近づけると中身が…

見えてる?

何も入って無くない?

軽い力で開く所が最新家電っぽい.

そして…

前知識通り

見事に入ってない.

開けずに分かるんだな今。

あー買い物行かなきゃなー.


「何も無いですよね…」


「分かってたの?」


「意図が分からなかったので…」


そうか…

「この衣が付いて揚がった豚肉にね.

ソースかけて食べたかったんだ.」


どれだろうと目が泳いでるのが

分かったので,

「トンカツどーれだ.」

クイズ形式にしてみた.

人差し指で指すそのお料理は…

「正解ですっ!」


あっ嬉しそう.

「クイズ好き?」


「クイズは…あまり.」


「そうなんだ.」


「正解する事が好きです.」


「うん.そうだよね.

僕も一緒.」


ふふふって笑い合える時間が

何だか心地よかった.

「ねぇ?」


「はい?」


「今、ここで普通に笑えてる事

分かってる?」


はてながいっぱい浮かんでいそうな

ルカちゃんは気が付いていないのか。


「ここに来てから普通に笑えてるよ。

研究所では企んでいるような作り笑いみたいだった。」


「そうなんですか…」


「研究所って緊張する場所なの?」


ルカちゃんの表情が険しくなった。

少し震えてる…?

「あぁ御免。

ただ何となく思った事だから、

気にしないで。」


「はい。」

何だか嫌な空気にしちゃった。

あまり触れないで置こう。

今後の話題としては避けるべき案件。

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