第11話

「上は寝室と書庫があります.

自由に使ってください.」


「ルカちゃんの部屋はあるの?」


「いえ,特には.」


「どこか空いてる部屋使ったらいいよ.」

適当な事言ってる.

部屋いくつあるのかなんて分からない. 

ただ,少し余裕を見せたいだけ.


「研究員さんは来たの?

ここに。」


「どの研究員さんですか?」


「ユウさん。」


「来ませんよ。

ここには、

インテリアコーディネーターさんと

日常生活アドバイザーさんと

それぞれの業者さんが来て、

色々揃えてくださいました。」


日常生活アドバイザーさんって

何言って帰るの?


「そうなんだ。


あっ

お隣さんに挨拶とかしなくていいの?」

全然,手土産とか用意してないけど.


「挨拶…


今は,それぞれ距離を置いている方が

良いのです.」


「何で?」


「聞きました?」


「何を?」


「心の…

脳の病気は治せません.

治そうとすると

人が変わります.

それは,

人と人の関わりの中で

病が生じると考える方もいます.


髪をご覧ください.

自己表示は髪の色でされています.


リョウさんは

黒い髪で

意思はまだ決めかねているという

状態を表します.


私は

黒色をベースに

金色のメッシュが入っているので

ドールです.


大学と繋ぐと

色々な髪色の方と接するでしょう.

黒い方の方が少ないかもしれませんが,

こちらの世界に馴染んでからで良いと思います.

分からないので教えてくださいという

スタンスで聞けば応えてくれます.


見た事のない色の髪の方は

一切の関わりを拒絶するという意思表示を持った方ですので

間違っても話しかけないようにされてくださいね.

既存の色を使うと不都合が生じる事から

その意思を持つ方々のために考え出された色です.」


「うん.

有難う.

分かった.」


その意思を持つ人のために

わざわざ考えられた色…

どんな色合いなんだろう.

分かったって言いつつも

分からないよっ.

考える事とか

気をつけないといけない事とか

頭が爆発しそう.

やっていけるのかー僕.


「頭痛い.」

口から,ふいに飛び出た.


「入れ替えますか?」

えっ!?

ぎょっとして見ると

「冗談です.」

って戻ってくる.


今,本当に

参るからやめて欲しいよ.

少し溜め息が出た.


「食事どうされます?」


「食事?

もう疲れたから外行こう.」

あんまり何かをしたって訳ではないけれど,

精神的に忙しかった.

そう,精神的にね.


「…

意図は汲みました.」


「うん?」


「何系を?」


あぁ…

「和食かな.」


「食べられないものは無いですか?」


「何でも食べられるよ.

そう躾けられてるし.」

威張る事でも何でもない.


「何時頃食べます?」


今…

昼過ぎだから…

あぁ,でも少し眠たい.

色々聞いて頭いっぱい.

「19時?

眠たいから,先食べたいなら先に.」

あぁルカちゃん食べなくても良いのか.

よく分からないけど,

ご飯の代わりに言葉掛けかな.

霞を食す仙人じゃないんだから,

そんな事も無いのかな.


「僕は少し眠るけれど,

僕にとってルカちゃんは必要な存在だから.

傍にいて欲しい.


ごめん.寝かせて.」


何だかルカちゃんの顔が

ぶわっと赤くなった.

違うのか?

違うのか???

やり方が…


分からない…


「おやすみなさい.

いってらっしゃい.」

変な返しを貰えた.

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