第8話 続き 上2つは打ち込み部屋.1つにしたら良かった.
ドアを出ようとすると後ろから声がした.
「あれ,着いてる?」
…あれ?
どれ?何?
「はい?
あれとは…」
「腕時計.」
振り向くとユウさんが左手上げて右手で指さしてた.
腕時計ー…
左手のくるぶしに着いてた.
真っ黒の.
シルバーの腕時計,何処にやったっけ.
何だか品物も記憶も,どっかに置いてきたみたい.
両親からの高校入学祝だった気がする.
昔の物に執着しない方がいいのかもしれない.
分からないけど.
「時間が重要ですか?」
「時間というよりも…
アラーム鳴ったら,表示を見て.
指示に従って.
なるべく身に付けておくように.」
「はい.分かりました.」
「目に入れてたり,頭に直接入れてたりするんだけど,
リョウくんは腕時計型が今の所いいでしょ.」
「え?
はぁ…まぁ…」
何の事だかワカラナイ…
「私も,着けてます.」
ルカちゃんは,ピンク色だった.
何だか凄い変身しそうな勢いで見せてくれたね.
「可愛い.
僕,黒色.」
同じポーズをとると戦隊ものみたい.
嫌いじゃないな.
「じゃ,気をつけて.」
ユウさんが言ってくれた.
「はい.
また,来週に.」
ドアが人物を認証して開閉する.
きっと,これで出入りする者を把握した上で
セキュリティーも兼ねてるんだろうなぁと思った.
「ルカちゃん,住居分かる?」
目がくるんってして,
キラッとする.
あぁ…
何かデジャヴ.
これ見た事無いけど,
いつか見た事あるような気がした.
「仕込まれてますから.」
…
「えーっと…
まず,それやめようね.」
焦りながら動揺しながら
作り笑う僕を不思議そうに眺めるルカちゃん.
「近いの?
歩いて行ける?」
更に不思議そうに
半ば大丈夫か,この人
級に不思議がるルカちゃん.
「歩いては行けません.
病気になりますよ.」
歩いたら病気になる…
僕の常識が…
通用しない.
歩かないと病気になるの間違いでしょ.
あれだけ,
アプリやらで住民を歩かせて
健康を作ろうとしていたのに…
ずっと寝ていた僕の筋肉が
どの程度持つのかなんて計算は
全くしていなかったけれど…
少しは動かないと
逆に不健康になるんじゃないかって
健康オタクのように思ってた.
「それ,何でなの?」
聞いてみた.
もう気軽に…いや,
まだ気軽には話せないけれど.
聞ける人はルカちゃんしかいなかった.
支給された携帯には
ルカちゃんの番号と
研究所の電話番号しか
入っていなかった.
もう家族の名前も
友人の名前も
携帯を見た所で
入ってなんか無いし,
空で思い出せる番号に
かけてみるなんて馬鹿げた事やるような,
ナンセンスな人でも無かった.
「強力な紫外線が降り注いでいます.
皮膚が癌化します.
老化も早いです.
むやみに外へ出てる人はいません.」
「そうなんだ.」
何だか僕の眠る前の時代.
あれほど世界各国で対策の会議を
それこそ頻繁に行っていたのに.
全て建前だったのか.
それとも
太刀打ちできなかっただけなのか.
何だか,そんな事を思った.
「オゾン層を修復する技術は?
今あるの?」
「無いので,国ごとに覆いを被せています.」
…
無いのは想定範囲だったけれど…
覆い…
覆い…
「そっか.」
何だか僕が残念そうに見えたのか,
「国ごとに違います.
様々な方法で紫外線を抑えようとしています.
オゾン層を作ることが出来たら,
人は,また以前のように生きられるのでしょう.」
ルカちゃんが続けた.
生きられるのでしょう…
かぁ.
色々聞かないと
僕,この世界で生きていけなさそう.
エレベーターを使わず階段を使うようだ.
今はエネルギー節約の時代なのか.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます