第5話

「ドールさんと一緒に帰ったらいいよ.

心配いらない.

一通り学習しているから.

説明書は,

まぁ、おいおい見てよ.

厚ーいからさ.

困った時に見る位でいいんじゃないかな.」


おいおいおい…

それで良いのかな.


「有難うございます.」


「着替え,そこにあるから.

趣味は分からなかったので,

適当に選んでる.

何着かは家のクローゼットに入ってると思うよ.

ドールさんが,きちんと持って帰っていれば…」


「出来てますよ!

持って帰りましたから,安心してください!」

ちょっとプンスカ言うルカちゃんが可愛かった.


1人で行くという訳では無くて,

ルカちゃんが一緒という事が本当に

心強かった.

僕がいるよって言ってあげたいところだけど,

そんな余裕が今の僕にはない.


「ロボット三原則は一応入ってるけど,

マスターに危害を加えられそうな時には

応戦するようになってる.

ただし,研究員には手出しできないように

設定されてるよ.

この子たちは研究員がいなくなったら

自分たちが維持できないからね.

あはは,そんな状況にはならないとは

思うけれど.


あぁ,食べなくてもドールは維持できる.

食べる事も出来るけれど,

それは生命維持として機能しないんだ.

生命維持するために必要な事は何だと思う?」


「電気?」


「うん.

普通な答えだね.」


「ガソリン?」


「今,そんなものには頼っていないよ.

国のパワーバランスが変わった.


締め切るよ?

いいの?」


この人何で,

こんな意地悪な言い方するんだろう.


「降参でいいです.」

何だか屈辱感満載だ.


「必要とされる事だよ.」


「へ!?」


「リョウ君が目覚めるまで,

君のために動いているんだと自覚しながら

動いていたんだ.

健気じゃないか.

君が不必要だという時にドールさんは止まる.

何と合理的で

お互いに傷つける事無い

仕組まれた設定だと思わないかい.


成長はするよ.

ただ躯体は成長しないから,

メンテが必要.

1年置きで良いと思う.

リョウ君は一先ず1週間ごとかな.」


「理解しました.

この子たちという事は,

何体か世界中に稼働中ですか?」


「ふふん.

秘密だよ.」


「…そうですか.」


コマンドが日本語では無かったから,

世界中にいそうな感じがしたけれど,

何とまぁ秘密との事だから…

詮索はしないで置こう.


「ルカちゃん.

帰ろっか.」


ルカちゃんが

キョトンとした顔をして

僕を見る.


「あぁ,ドールさんは

自分が何者か

しっかり分かってないよ.


最初に教えてあげてよ.」

代わりに研究員さんが答えた.


下の兄弟いなかったんだけどな…


「僕は渡会リョウです.

リョウって呼んでね.


君はルカ.

名字は…

一緒でいっか.

僕はルカちゃんって呼ぶよ.


いいかな?」


「リョウ.

よろしく.

私,ルカ.」

予想以上に

流暢で…

ロボット的だった…


「うん.

よろしくね.


一緒に行こう.」


一緒に…

生きていこう.

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