第17話 夢、現



『浦島一灯流、刀術壱ノ型・黒椿』


「キャッ………………………………、ア、アレ?」

「アワワワワワワワワワ!」

「………フン」



 別に助けたワケでは無い。

 鎧蟲。そう呼ばれるこの百足擬きが如何程の存在モノか、それをただ知りたかっただけだ………。



「クフフフフフフフフ♪ 危なかったな、お前様達。フフ♪」



(動く事は解っていたぞ、お前様♪ だから返していたのだ、お前様の愛刀かたなをな)


 さもそう物語る魔女の笑顔ドヤが癪ではあるが、対甲冑戦の定石通り。

 外殻の隙間を流れし黒き一灯に、百足擬きの首はボトリと地へ堕ちた。


 異常にデカくその外殻の硬さは脅威ではあるが、所詮鎧蟲ムシは虫………とも易くは言い切れ無い。


 ウネウネと、首を落としてもなお蠢めくその身体。


 一見、節足ムカデ特有の最期とも見ゆるこの動き。されど百足擬きの身体は、ハッキリと頭の方へと寄っている。



「死んでいない、のか?」

「アンタ何ボケっとしてんのよ、トリャアァァァァァァッ!!! い、言っとくけど、別に助けてなんて頼んでないんだからね! フン」



 焔立ち上る紅蓮の一撃こぶし

 正面より頭蓋の中央を叩き潰された百足擬きは、赤髪の微少女がその拳を抜くと同時に白き灰となり崩れて逝った。



「どうだ、感想は。初めて見たのであろう?鎧蟲を♪」

「フン………。妖、とでも言ってくれるのか?」

「クフフフ♪ 見えるであろうな、超常と。初めて見知るのであれば尚更に。

 だが既に在るであろう?この世には。などと呼ばれる、忌々しい現実が♪」



 紫髪の魔女は、そう嗤いながらに自らの胸に埋もれる紫色の輝石ちくびを指して見せる。


 フン、なるほど確かに。まさにこの世は、夢現つかな。



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