第16話 白き害虫



『朔夜よ、太郎ジョンの名を継ぐに当たり、其方は二つのを極めねばならん』

『二つの、ですか?』


『あぁ、そうだ。常より俺の立居振る舞いを側に見ておれば、直ぐにピ〜ン!とるであろう?ホレホレ〜♪』


『なるほど。太郎とは、師匠せんせいの様に頭のおか………


(あぁん?俺の、が、なん、だって〜?)


 い、いえ、何でもありません! 師匠、そうやって直ぐグリグリに訴えるのはどうかと、ウギャ───────!』




 ************




「まったく、太郎ジョンだなんて、見え見えの偽名ウソ吐いて、つくづくムカつくわね、あの変態!!!」

「アリスちゃん前出過ぎ! 魔法こうげき当たっちゃうよ!」

「大丈夫よミーヤ、このフレアリス・フォン・フラムディア様がそんなヘマするワケ♪」


『アアアアア、氷棘弾(アイスニードル)!氷棘弾(アイスニードル)!!氷棘弾(アイスニードル)────!!!』


「痛アァァァァァァ!」

「アワワワワワ!!! フレアリスさんごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「リ─リ─ア────────────!!!」


「………オイ、は一体何の冗談だ?」

「クフフ♪ 鎧蟲がいちゅう駆除だが?見ての通りに」



 杖を振り、色とりどりの奇跡を纏いて跳び回る聖女しょうじょ達。その奇跡の的と蠢めく巨大なソレを紫髪の魔女は、と呼んだ。


 ウネウネと気色の悪い無数の足に鋭い牙。


 見た目は白く巨大な百足に限りなく近い。

 近いが、その外皮の硬さは俺の知る虫の次元をゆうに超えている。



「なんだ、見るのは初めてか?鎧蟲を♪」

「………あぁ。だが俺が聞いたのは、そちらでは無い」


「もぉ! アンタね、魔法撃つ時はちゃんと目開けて撃ちなさいよ。結構痛いんだからね!!!」

「ごごご、ごめんなさい、フレアリスさん」



 戦いの中、笑い声すら聞こえて来る緊張感の無さ。



「二人とも危ない!!!」



 フン、当然だ。戦場いくさばでは、気を抜いた者から死んで逝く……………。



(キシャ─────────!!!)









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