赤き女帝

第13話 二人の半裸


「姉〰〰〰さま♪」

「ん? なぁに、アリスちゃん」

「あのねあのね、アリスはね♪ やさしいお姉さまがだぁ〜い好き♡」

「フフ♪ ありがと。私もアリスちゃんの事がだ………(ケホッ、ケホッ)」

「姉さま! だいじょうぶ!?」


「………えぇ、大丈夫ょ。

 だって私の側には、こんなに可愛いアリスちゃんが居てくれるんだもの。だから姉様は最強無敵、こんなの全然平気のへっちゃラピスラズリよ♪」



 ほんのちょっぴりだけ昔。

 とある大きな国の端の端のず〜っと片隅の古ぼけた小さなお城に、それはそれは仲の良い美少女姉妹が居たわ…………。



「無様ね」

「姉、様?」

「実の妹でありながら、この程度………」

「待って姉様、違うの! 今日は偶々調子が悪くて………」


「やっぱり要らないわ」

「………え?」

「聞こえなかった?アリスちゃん。もう要らない、私はそう言ったのよ?♪」


「ご、ごめんなさい。次はもっとちゃんとしっかり出来る。出来るから、だから姉様もう一回………(ザクッ)。

 ア、アレ?……ウ、ソ………姉…様?……なん………で……」


「だからね、さっき言ったでしょ?アリスちゃん♪

 私の側には、貴女みたいな弱いなんて、要、ら、な、い、の♡ フフ♪」



 降り頻る雨の中、少女わたしの柔腹を貫いた紅の焔刃。

 ジュウジュウと音を立てる灼熱の刃を伝った血の涙は、鉛色をした曇天の暗空へ別れの赤き狼煙を細々と上げていた。


「姉……さま………待っ」


 現在いまからほんのちょっぴりだけ昔。とある大きな国のずっとずっと片隅に、すごく仲の良かった美少女姉妹は、確かに彼処に居んだから………………。




 ************




「………ぅん」

「やっと起きたか、この少女が」

「ぅん?………姉、様?」

「フン、生憎俺は其方の姉様では無い」


「………な、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



 キンキンと耳をつんざく悲鳴。



「ななな、なんで私とアンタが抱き合って寝てるのよ! ししし、しかも下着姿ハダカで!!!」

「………全裸はだかではない、下着姿はんらだ」

「どっちも変わらないわよ、変態!!! ま、まさかアンタ、私のピチピチボディに欲情して私の服を…………」


「フン。冗談はその存在むねだけにして貰おうか」

「私のお胸が、何デスってぇ────────!!!」



 紅蓮の炎を纏いながらまたも振り上げられる拳………。


 小煩い少女はさて置き、しばし語るとしよう。

 天上の割れ目より僅かに月の明かり射すこの地底の湖に、何故この赤髪の小魔女と俺が二人切りと迷い落ちたのかをな。

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