章間小話・聖女の日常 Days1・月下の真実


 時は少々逆巻いて、聖女の楽園と呼ばれし廃城の門前にて、灰髪の女剣士が倒された日の夜。

 しくも門限破りの現行犯と相成った二人の聖女は夕食の後、大浴場にて罰清掃の最中にあった。



「………おかしいわ」

「な、何がおかしいんですか、フレアリスさん?」

「だってリリア、よく考えてみて? あの鬼乳せんせいが無断外出と門限破り、この二つの罪を大浴場おふろ掃除。しかも、たったの一回だけで許すなんて事があると思う?………いいえ、あり得ないわ!」


「??? そ、そうですか?」


「そうよ! しかも今回は前回の反省を活かして、ベッドの中に身代わりデコイのお人形も仕込んだし、食堂のオバちゃんにお願いして、買い出しに出る荷車の空き樽の中に隠れてこっそりとお城も抜け出した。

 リリアだってちゃんと、ベッドにお人形は仕込んだんでしょ?」


「は、はい。お部屋の子に、点呼の時のお返事もちゃんと忘れずにお願いしました」


「そぅ………、私達の作戦はだった。

 なのに先生はあの時、門の陰に居た。まるで私達の作戦が、筒抜けだったかの様にね………。

 ていうか、そもそもあの時間はまだ門限が来て直ぐだったから、点呼の時間には大分余裕があったはずよね?」


「そ、そうですね」


「バレるとしたら、もう食堂のオバちゃんのリーク位しか思いつかないのだけど………。オバちゃんと私は


『トマトにはちょっぴりお砂糖をかけた方が美味しいと思うの同盟』


 の同士として、深く熱い絆があるわ。

 だからオバちゃんを疑うなんて、私には出来ない。オバちゃん、私はオバちゃんを信じてるわ♪

 ねぇリリア、リリアはどう思うかしら?」


「あ、あのフレアリスさん。私にはフレアリスさんが、さっきから何を疑問に思っているのかが、良く解らないのですけど………」

「えっ!? だからねリリア、私とリリアの完璧かつ華麗なの外出計画が、どういうワケで鬼乳せんせいにバレたのか。って、お話でしょ?」


「ア、アワワワワワ!」

「どうしたのリリア? そんな急に慌てて」

「フ、フレアリスさん、じじじ、実は………」


「よぉ、お前様達♪ ヤっているか?真面目にな」


「先生! ちょうど良いところに」

「どうした突然、気色の悪い。

 滑って頭でも打ち付けたか、お前様が神妙な面持ちで私を待っていたなど………」


「失礼ね! まっ、それより先生。………クッ!今夜は完敗と認めるわ。後学の為、恥を忍んで聴くけれど。

 さっきはどうして城門なんかに居たのかしら? あれはまるで、私とリリアがやって来るのを予知していたみたいだったわ………」


「あぁ? フッ、予知も何もきちんとして行ったではないか、お前様達。を」


「………は!?」

「アワワワワワ……………」


「更に良かったのだがな。守りさえすえば、門限を。しかしまぁ、は成長が見られたな。無断で城の外に出て行かなかっただけ♪

 じゃあとっとと寝ろよお前様達、掃除を済ませてな。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ♪」



「ぬぬぬぬぬ………………リーリーア〜〜〜〜〜!」


「アワワワワワ………フ、フレアリスさん。わわわ、私、内緒だって知らなくて………あの、その、えっと、ごご、ごめんなさい!!!」

「アンタねぇ、察しなさいよ! 普通話の流れで分かるでしょ!?」

「アワワワワワワワワワ! ごめんなさい、ごめんなさい」


「………ハァ。まぁ、良いわ。リリアらしい真面目なうっかりだもの」

「フ、フレアリスさん?」

「だけどね……………」

「アワワワワワ、なな、何だか少し怖いです。こここ、来ないでください!」


よ。だって、今日という今日はリリアのその常識なデカπに、常識とは何なのかをタップリ揉み込んでヤルんだからぁ〜〜〜〜〜!」

「イ、イヤ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………♡」



 その夜。聖女の楽園の聖なる泉に、艶やかな悲鳴が小一時間程響き渡ったのは言うまでも無い………。

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