第10話 灰色の舟盛り



「………本当に良いのか、俺をこのまま解き放って」

「クフフ♪ なんだ、良かったか?縛られている方が♪」

「な、吐かせ! 此処には貴様の小魔女おしえごがわんさと湧いているのだろうが!」


「フフフフフ、なんだ、脅しか?♪

 まぁ及ばんさ、心配に。

 再びお前様のド頭に風穴を空けてやるだけだからな、もしもの時は。それにお前様は弱い、私よりも格段に。クフフ♪」

「………フン」


「第一それほど弱くはないさ、私の可愛い教え子達は♪ むしろ守ってもらわねば困るくらいだ。自らの貞操、程度はな………。

 だが幾らウチの美少女ガキどもが可愛くとも、揉むなよ?πを、手当たり次第に♪ なぁ、殿? アハハハハハ♪」

「…………チッ」



 何の気紛れか、程なく俺の拘束は呆気も無くに解かれた。俺は特に厳しい尋問を受けた訳でも、激しい拷問を受けてもいない。


 ただただ、悪趣味な嫌がらせを受けたのみ………。


 か、勘違いするなよ!?

 あの後は何も無かったからな! 其方らの妄想する様な事は、全然全く微塵も無かったのだからな!!!!!



「あぁ、訊いておこう最後に一つ。

 あの時何故、その宝種むねの奇跡を使わなかった?お前様。

 奇跡を起こさぬ聖女など、文字通り宝種たからの持ち腐れ、だと言うに」


「………………奇跡など、俺とは無縁の長物だ」




 ************




「………おい魔女よ、此れは何の冗談だ」


「クフフ♪ 何か問題が?」

「貴様まさか、このにこのを纏えとでも言う気か!!!?」

「その通りだが♪まったく以って」

「フザケルな!!! 誰がこの様なヒラヒラ………」


「あぁ〜、スマンスマン。

 すっかり失念していた、お前様が処女ウブだという事を。荷が重かったな、処女ウブには(ウブには、ウブには………には)。クフフフフ♪」

「………俺は、子供ウブでは無い」



 その後、身体から生乾きの嫌臭がする。などと言われなき中傷を受けた俺は、殆ど強引に風呂へと突き落とされた訳だが………。



「ホホォ~ン♪ 小魚でも舟盛り、とはよく言ったものだな。似合うじゃないか、中々に。クフフフフ♪」

「う、ウルサイ! ク………風通しが………………」



 まんまと不敵な魔女の挑発えみに乗った結果が、このだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る